大企業の挑戦が変革を生む——「TMIP Innovation Award 2024」日経ビジネス賞:NTTドコモからスピンアウト『株式会社coordimate』

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【この記事は日経ビジネス2025年2月10日号に広告掲載されたものです】

大企業発の新規事業創出を表彰するTMIP Innovation Award 2024が大盛況のうちに幕を下ろした。2023年に続き第2回目の開催となった今回は、審査員が「レベルが高い」と口をそろえる接戦に。市場性・革新性・社会インパクトを軸に行われた審査の結果、業界の常識と社会を大きく変える可能性が高い新規ビジネスが最優秀賞に輝いた。

TMIPTokyo Marunouchi Innovation Platform)】 丸の内エリアに集積している大企業を中心としたプレーヤーの力と都市の力を、パブリックな立場から組み合わせ、インパクトのある事業創出を目指すオープンイノベーションプラットフォーム

大企業の挑戦が変革を生む

「ベンチャーキャピタル(VC)とは話していますか? 会社が予算をつけてくれないなら、すぐにVCに相談したほうがいい」「新規ビジネスとして独立させたいのか、既存事業に組み込みたいのか、どちらですか」

審査員からは鋭い指摘や質問が飛び、壇上の発表者が情熱的に答える。2024124日、丸ビルホール(東京・千代田)で行われたTMIP Innovation Award 2024の会場は、立ち見が出るほど熱気にあふれていた。このTMIP Innovation Awardは、大企業発の新規事業創出を表彰する目的で23年に始まったピッチイベントだ。この日の最終選考には5名が登壇して事業内容をアピールし、審査員がその市場性・革新性・社会インパクトを評価した。

特別審査員の入山章栄氏(早稲田大学大学院教授)、審査員の守屋実氏(新規事業家)、藤本あゆみ氏(一般社団法人スタートアップエコシステム協会代表理事)、松井健氏(日経ビジネス発行人)が最優秀賞に選んだのは、建材リユースによる新しい建築スタンダードを目指すArchi-Hubを推進する竹中工務店の藤井康平氏だった。

藤井氏は、解体スケジュールや品質保証の問題からスクラップ・アンド・ビルドが当たり前だった建築の世界で新たなプラットフォームを提供、20兆円規模とされる建材市場の半分を2050年にはリユースで置き換え、資源の有効利用と高騰する建設費の抑制を両立させたいと訴えた。

質疑応答では入山氏が「業界だけでなく社会をも変えうる。国にも働きかけ、多くのステークホルダーを巻き込むべき」とアドバイス。藤井氏は各審査員の講評を受け「まだ会社を説得しきれていないと感じるので、風穴を開けるためにも最大級の評価をいただければ」と持ち時間を締めくくり、栄冠を手繰り寄せた。

優秀賞は2名。オーディエンス賞とのダブル受賞となった三菱商事マシナリの今井香菜子氏は、自らの業務への疑問を原点に進める貿易業務の効率化で「日本製品をよりスムーズに世界へ」とアピールし、過去にフリース素材の大ヒットなどの実績があるEx東レの西田誠氏は「素材から進化させ繊維産業を日本に取り戻す」と宣言した。

このアワードは来年も開催が予定されている。次に新規ビジネスで社会変革の主役へ名乗りを上げるのは、どの大企業か。

日経ビジネス賞:NTTドコモからスピンアウト『株式会社coordimate』

7つ目のビジネスアイデアが5年かけて独り立ち

TMIP Innovation Award 2024で日経ビジネス賞を受賞したのは、NTTドコモからスピンアウトした株式会社coordimateの飯野健太郎社長だ。アワード最初の登壇者として過去の自身の写真なども見せながら熱意あるトークで観衆の心をつかみ、大きな拍手を浴びた。

飯野 日経ビジネス賞を受賞しとてもうれしく、また、社内外からの反響に驚いています。この記事をお読みになる方々とも共創していければと思っています。

私たちは、試着室や自宅にいながら服装へのアドバイスを無料でもらえるオンラインサービス『coordimate』などを運営しています。私自身の「服選びのセンスがない」「アリかナシかが判断できない」という課題からスタートし、2019年にNTTドコモの新規事業創出プログラム『docomo STARTUP』に採用され、22年に本格サービスを開始し、242月にNTTドコモからスピンアウトしました。スマホアプリの提供のほか、大手商業マネジメント会社とも実証実験を重ね、この100年不変だった試着室での体験や接客の刷新、試着アイテムのデータ活用も視野に入れて、アパレルの売上向上にも取り組んでいます。経済成長しファッションへの関心が高まっているインドネシアやタイなど海外での可能性も見えてきました。

自らの事業を進めながら次の挑戦者も支援したい

このビジネスアイデアは実は7つ目です。過去には外部のVCから「大企業にありがちなお坊ちゃんアイデアで、ビジネスへの理解が足りない」などと厳しく指摘されたこともあります。悔しかったですが、行動あるのみ。積極的に社外に飛び出し、「どういう点を考えるべきか」お題をいただいてはブラッシュアップすることを繰り返しました。制度や上司にも恵まれました。スピンアウトまでの5年間、社内の誰からも「もうやめたら」とは言われませんでした。ユーザーとしての意見や感想もありがたかったですし、何より、得意不得意だけで私を判断することなく、何を大切にしているのかという価値観も尊重し、自分の枠を少しずつ広げさせてくれました。横並びの目線で、プロセスは称賛し結果は冷静に振り返ってくれた上司に感謝しています。

大企業が新規事業創出に取り組む意義はいくつもありますが、経営視点で言えば社内発の新規事業は十分に次の屋台骨になり得ます。当事者としても、安心して大きなチャレンジができる環境はとても魅力的です。次は私自身がしてもらったように、挑戦する誰かの枠を広げる手伝いもしたいです。

今後は誰もがダサくない服を選べるようにするだけでなく、さらに前向きに、服装はコミュニケーションツールであると捉え、多くの方と共創の上、適切な服選びの支援を通じて一人ひとりがしたいことの実現を後押ししていければと考えています。(談)

日経ビジネス2025年2月10日号に広告掲載

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