2022年12月〜2023年2月にかけて「CDLEハッカソン2022」が開催されました。日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催するこのハッカソン(※1)は、G検定・E資格(※2)保有者のみが参加できるイベントです。
今回で4年連続、4回目の開催となった「CDLEハッカソン」。このハッカソンでは、企業が事業運営によって得た実際のデータを提供し、参加者はそのデータを活用したソリューション開発と提案に取り組みます。資格保有者のスキルアップはもちろん、データを提供した企業の新規事業創出へつなげることも目的としています。
※1 ハッカソン・・・エンジニアやデザイナーが集まってチームとなり、特定のテーマに対して決められた期間でアプリやサービスを開発し、その成果を競うイベント
※2 G検定・E資格・・・ともにJDLAが認定する資格の一つ。G検定は「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有していること」、E資格は「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有していること」を証明する(JDLA公式サイトより引用)2023年2月時点では、63,000人ほどが資格を取得。
私たちにとって、都市における「ウェルビーイング」とは?
今年のハッカソンのテーマは、「デジタル・データを活用してウェルビーイングな都市を実現するサービスソリューションの開発」です。
参加者は、スポンサー企業から提供された「人流データ」や、「バイタルデータ」など、計6つのデータの中から1つ以上を選択し、オープンデータとも組み合わせながら、ビジネスアイデアの開発に挑戦しました。
2023年2月12日に行われた最終審査会では、計5チームが「都市にとってのウェルビーイングとは何か」をそれぞれ考え、2ヶ月間で練ったサービス構想や事業アイデアについてプレゼンしました。
審査の基準となるのは「産業・社会的なインパクト」「独自性」「技術力」「シナジー創出」の4つの観点。5名の審査員が各チームのプレゼンや成果物に対して、これらの観点を5点満点で評価しました。各チームのユーモアのあるアイデアに、会場全体が笑顔と熱気にあふれていました。
審査の結果、最優秀賞には住み替えを希望する人々のマッチングプラットフォーム「TRANS HOME(トランス ホーム)」を制作したチームが選ばれました。
ライフステージや価値観の変化によって、住みやすい住居や街は常に変わり続ける。その考えをもとに、同チームは誰もがより簡単に住環境を選択できる世界の実現を目指して「TRANS HOME」を構想したといいます。
同サービスは、ユーザーが自身の持ち家などの情報と住み替え先の希望条件を入力すれば、住み替え先の候補の家とマッチングされるシンプルな仕組みとなっていますが、開発に当たっては2つのAIモデルが使われています。1つ目は、人流データ駅周辺の幸福度を組み合わせて学習することで、ユーザーの行動履歴から幸福度を予測するAI。2つ目は、人流データと交通事故発生数や犯罪発生率を組み合わせて学習することで、安心・安全を予測するAIです。予測された値と物件の比較で、希望条件にマッチした物件をレコメンドするシステムをつくりあげました。
チームの皆さんからは「ライフステージに応じて自由に住居を変えていけるようになれば、個人の幸福度が徐々に高くなり、最終的には社会全体でのウェルビーイングにつながるはずです」と力強いコメントを頂きました。
また、審査員を代表してデロイトトーマツコンサルティング執行役員の森さんからは「今回は持ち家の住み替えをテーマとしていたが、賃貸でも住む場所を交換できる可能性があると思う。実際に事業化する上ではいくつかのハードルが見込まれるが、同時に事業的なポテンシャルも十分に感じた」との講評を頂きました。
表彰式の終了後には、参加者と審査員、運営メンバーを交えた懇親会も実施。約2ヶ月という短い期間ではありましたが、ソリューション開発に向けて濃密な時間を過ごしたメンバーたちが交流を深めました。
これまでにないデータの活用方法を探索し、可能性を広げていく
他にも、ゲームの要素を取り入れながら建設現場での労災リスクを減らすサービスや、ユーザーに合わせて街の情報をレコメンドしてくれるサービス、人の孤独や孤立を解決するために特化したマッチングアプリなど、「ウェルビーイングな都市」の実現向けて、様々な角度からのアイデアが集まりました。
G検定・E資格の取得者にスキルアップや実践の機会を提供し、さらなる技術向上やリーダーシップの育成を目的に開催した「CDLEハッカソン2022」。テーマスポンサーを務めたTMIPにとっても、今後の活動に向けたヒントや学びが詰まったイベントとなりました。
「ウェルビーイングな都市」とは一体何か。全チームとも、まずはその定義付けから検討がスタートしました。近年では、ウェルビーイングという言葉は様々な解釈がなされ、より広義の意味を持つ概念へと変化しています。だからこそ、私たち一人ひとりが「自分や他者、それぞれにとってのウェルビーイングとは」を考え続けていく必要があるのかもしれません。
▼CDLEハッカソン2022の実施模様は、以下のアーカイブ動画からもご覧いただけます
サイト : https://www.jdla.org/cdle-hackathon/#about