2022年4月14日、TMIPは2021年度年次報告会を開催しました。4期目を迎えるTMIPの活動実績の報告から2022年度活動計画の共有、プロジェクト会員の活動紹介、アドバイザー7名による座談会まで。
TMIPを形作る方々が一同に会し、ネットワーキングや交流を行う機会ともなりました。
2022年度は「カーボンニュートラル」と「XR・メタバース」に注力
報告会は、TMIP代表を務める佐野洋志による2021年度振り返りからスタート。
「三つの連携」を軸に、昨年度の活動内容を振り返りました。
佐野「一つ目はアカデミア連携です。東京大学をはじめ、さまざまな大学とリレーションシップを結び、イベントをはじめとした複数の企画を実施しました。二つ目は団体連携。JDLA(日本ディープラーニング協会)ともご縁があり、『CDLEハッカソン2021』をテーマスポンサーという形で支援する機会にも恵まれました。三つ目が地方連携。特に成田空港に関する取り組みなどを通じて、千葉県と結びつきを深めた一年だったと感じます」
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中でもアカデミア関連のイベントは、TMIP会員からの関心も特に高かったと佐野は続けます。加えて、会員同士が交流を深めたり、連携してプロジェクトを立ち上げたりする機会を複数つくれたことについて、「今後コミュニティがより活性化することにつながるはず」と手応えを口にしました。
佐野「隔週ペースで開催した『ランチコミュニティイベント」では、年間で約50社の会員企業が登壇するなどし、会員同士の横のつながりをより深められたと感じています。また、2021年度にスタートした『イノベーションサークル』では、林業やカーボンニュートラル、量子技術などのテーマですでに計7つが活動中です。街をつかったニーズ検証・実証実験の支援をする『アーバンラボ』においても、プラスチック資源循環事業や空飛ぶクルマのVRコンテンツなど、計8件のサポートができました」
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振り返りを踏まえ、2022年度のTMIPは何に注力していくのか。佐野は「イノベーションテーマにおける事務局企画、イノベーションサークルの発展、コミュニティの進化、スタートアップとの連携」の4つをポイントに挙げ、見据える先を述べました。
佐野「事務局企画については、カーボンニュートラルとXR・メタバースの二つのテーマに注力します。前者は『サステナブル・ブランド・ジャパン』と連携したイベントを2022年6月に開催予定であり、後者は『丸の内City DXパートナーズ』の後続企画となるサークルの立ち上げ準備を進行中です」
事務局メンバーの発表を終え、TMIPとの連携を進める企業や団体の紹介へと移りました。それぞれの概要から活動の詳細、TMIPのプラットフォームを通して実現したいことまでを、訪れた4人の代表者が紹介する時間となりました。
TMIPアドバイザーによる座談会も実施
年次報告会の最後には、TMIPのコミュニティを支えるアドバイザー7名による座談会を実施。会員企業のイノベーション創出に向けたヒントについて、それぞれの専門性や知見から語り合い、考えを深める時間となりました。
■登壇者一覧(アドバイザーの皆さんの詳細なプロフィールはこちら)
・経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室長 石井芳明氏
・一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会 理事長 谷澤淳一氏
・東京大学 産学協創推進本部 スタートアップ推進部長・特任教授 長谷川克也氏
・日本ベンチャーキャピタル株式会社 常務執行役員 / 投資部門 ベンチャーキャピタリスト 照沼大氏
・モニターデロイト ジャパンプラクティスリーダー 藤井剛氏
・一般財団法人エンデバー・ジャパン Managing Director 眞鍋氏
・TomyK Ltd. 代表 / 株式会社ACCESS共同創業者 鎌田富久氏
以下は、座談会における各登壇者のコメント抜粋。
石井氏「岸田総理による年初の記者会見では『2022年をスタートアップ創出元年にしたい』という発表がありました。スタートアップだけでなく、大企業や大学も含めたエコシステムを発展させていくことが、今後ますます、国の成長戦略においても鍵を握ることになるでしょう。
2020年に開始したオープンイノベーション促進税制に加え、大企業人材のスタートアップにおける“武者修行”やEntrepreneur In Residence(客員起業制度)の導入を支援するための政策も準備しています。まさにメニューを盛り込んでいるところなので、会員の皆様からも要望やご意見があればぜひ教えてください」
谷澤氏「大企業が持つ海外ネットワークや強固なガバナンスは、スタートアップが足場を固め、より大きな成長を実現するためのアセットになるはずです。しかし、アセットを持つ大企業と必要とするスタートアップが結びつく機会はまだまだ少ない。そうしたマッチングを生み出す役割としても、TMIPの活動に大きな期待を寄せています。
また、今日の座談会を通じて、大企業内においては『出る杭を引っ張り上げる』ことが大切だと改めて痛感しました。マネージャーや経営者が、尖った人材をどんどん抜擢したり、後押ししたりする。その積み重ねが、やがて大きなイノベーション創出につながるのではないでしょうか」
長谷川氏「『産学連携』というと、かつては卒業生のつながりや技術分野の連携など、比較的小さなスケールでのつながりを指すことが多かった印象です。ただ『産学協創』という表現も生まれたように、近年では企業と大学の双方がよりコミットメントし、大きな連携へつなげる動きがスタンダードになりつつあります。
アカデミアとビジネスの最も異なる点の一つが『時間軸』です。大学は数十年スパンでの成功を見据えている一方で、企業はより短い期間でのゴールを目指している。どちらが良い悪いではないものの、時間軸の違いによる協創の停滞は少なくありません。TMIPの活動を通じて、そうしたハードルを超える協創が生まれることを期待しています」
照沼氏「昨年の国内ベンチャー投資に目を向けてみると、前年比の倍近い額が動いていたことがわかります。機関投資、クロスオーバー、企業による直接投資など、さまざまな方法での投資が活発に行われました。
IPOの合計は126社で、国内ではリーマンショック後初めて100社を超えたことになります。その背景には、優秀な若者が今まで以上に臆せず、次々に起業やスタートアップへのジョインを行っていることがあります。新たな人材が加速度的に、スタートアップ領域に流れてきている。政策等の後押しも受けながら、ますますスタートアップと大企業による競争が活発になり、急成長企業もより多く生まれるはずだと感じています」
藤井氏「日々絶え間ない変化の連続によって、特にこの先10年間は社会におけるさまざまな『ルール』が揺らぎ、今まで以上に定まらないと言われています。ただそうした揺らぎは、新たなマーケットの誕生にもつながるため、企業にとってはイノベーションを起こすチャンスとも言えます。
その上で、ますますコミュニティや繋がりの重要性が増していくと思います。先に石井さんが触れていた経済産業省の政策も、完成する前には民間やベンチャー、NPOなどのつながりがあったはず。『人・もの・金・情報』に続く第5の経営資源として、『コミュニティ』にしっかりと投資していく企業にこそ、より大きなチャンスが巡ってくるはずです」
眞鍋氏「エンデバー・ジャパンの活動を続ける中で、日本のスタートアップ支援に関心を持つ海外の方が数多くいることを実感しています。一方で、日本の大企業のスピード感をやや懸念しており、結果として投資機会が失われることも少なくありません。大企業がスタートアップと組む時は、スピード感を少し上げるための工夫が重要になるでしょう。
また、大企業がスタートアップの『失敗』をどれだけ許容できるかどうかも重要なポイントです。例えば、スタートアップと組む際は人事や評価システムを一時的に調整するなどして、リスクの取り方を根本的に変えていく。失敗は起こりうるものとしながら、成功事例を積み重ねていくことこそが、大企業がより意義のあるスタートアップ連携を生み出すための鍵になるはずです」
鎌田氏「大きな社会課題が数多く生まれる中で、産学官連携への期待はますます高まっているはずです。その上で、スタートアップにおいては、カリスマ的な経営者やリーダーが引っ張って成功へ導くというイメージは薄まっている。むしろ、やりたいことをクールに実現していくような起業家が増えてきています。
大企業の中でも、誰かの内発的な動機や、それを起点としたプロジェクトに人が集まりやすくなっている。そうした動きをより活発にするために、私たちアドバイザーもさまざまな形で支援をしていきたいと思っています」
より良い未来を拓くイノベーションを創出し続けるプラットフォームとして、TMIPでは実証実験やプロジェクトなどのTMIP会員を中心としてパートナーとの連携による具体的な取り組みが、年々数を増して実現しています。2022年度はどのような活動が立ち上がったり、次のステップへ進んだりするのか。産学官を中心に、これまで以上の協創が生まれるであろうTMIPの活動に、今後もぜひご注目ください。