2022年2月28日と3月1日の二日間にわたり、TMIPはデロイト トーマツ グループ、有志団体Dream On、三菱地所株式会社と「“空飛ぶクルマ”VR用体験車両を用いた一般向け実証実験」を共催しました。
空飛ぶクルマは、まだ日本国内において社会実装までには至っていません。一方で、構想の具体化や実証実験など、実装に向けた準備は着実に進んでいます。
今回の体験会もまさに、実装へ一歩近づくための機会として開催されたもの。空飛ぶクルマの社会受容性の検証、今後の活用・展開可能性の検証、疑似体験を通じた社会的認知の拡大の三つを目的に、デロイト トーマツ グループとDream Onが共同開発したVRコンテンツ(VRの技術を活かして実際に搭乗・飛行した際に近い感覚を味わえる)を一般の申込者が体験できるイベントとして催されました。
2025年の実用化へ。空飛ぶクルマのVRコンテンツを開発
そもそも“空飛ぶクルマ”とは、どのような乗り物のことを指すのでしょうか。国土交通省によれば、明確な定義はないと前置きしたうえで、「電動」「自律」「垂直離着陸」などのキーワードを特徴とした航空機と表現されています。ヘリコプターやドローン、小型飛行機などの特徴を併せ持ち、世界では他にも「eVTOL(イーブイトール)※1」や「UAM(アーバン・エアー・モビリティ)※2」と呼ばれています。
世界各国で機体の開発と社会実装に向けた動きが進んでおり、日本でも都市部における送迎や離島・山間部への移動、災害時の救急搬送など様々なケースでの活用が期待されています。大阪万博が開催される2025年を一つのマイルストーンに、事業開始・実用化に向けた企業と官民の連携も活発化しています。
※1 Electric Vertical Take-Off and Landing aircraftの略
※2 Urban Air Mobiltyの略
今回の体験会は、空飛ぶクルマのユースケースの一つとされている「地方交通」をテーマに実施されました。具体的には、地方の空港到着後から宿泊予定ホテルまでを空飛ぶクルマに乗って飛行する体験を、VRを用いた仮想飛行を通して味わえるという設計です。参加者は搭乗に必要な手続きから、機内での過ごし方、降機後のアクティビティまで、利用シーンにおける一連の流れを体験しました。
空飛ぶクルマが実装される世界を“五感”で体験してもらいたい
共催したデロイト トーマツ グループが、空飛ぶクルマの実用化に向けた専門チームを発足したのは2018年のこと。官庁自治体やモビリティ関連産業を中心に、国内外の市場・政策調査、戦略立案支援、エコシステムの形成や実証実験のサポートなど、幅広い事業支援を行ってきました。
また、同じく共催した三菱地所は、次世代エアモビリティを活用した新たな「まちづくり」や、新規事業立ち上げへの取り組みを加速させています。たとえば離発着場の設置やその運営などを通して、大丸有エリアを中心に保有するアセットを活かしつつ、その街自体もより活性化させるような取り組みを想定しているといいます。
こうした具体的な動きが着実に進む一方で、「空飛ぶクルマ」に対する社会の認知度・理解度は決して高くない状況です。より多くの人々に、空飛ぶクルマの可能性を知ってもらい、日々の暮らしのなかにまでそれが溶け込んでいる世界をイメージしてほしい。そうした想いが起点となり、体験会の実施へと結びつきました。
■体験会実施に関するプレスリリース
丸の内で“空飛ぶクルマ”一般向けVR体験の実証実験を実施~エアモビリティ社会実装に向けた認知度向上施策を始動、社会受容性検証へ~
体験会当日は記者向けの発表・質疑応答の時間も設けられました。空飛ぶクルマの活用における構想から今回の体験会実施の狙いまで。登壇した3名が描く未来や背景にある考えを話しました。
「空飛ぶクルマは『便利な乗り物』以上の可能性を秘めており、実装されれば未来の街や生活・働き方を一変させるだけの影響力もあると考えています。一方で、まだまだ生活者の中での理解度にギャップがあり、それぞれが抱く『空飛ぶクルマが実装された未来』のイメージは、大きく異なると言わざるを得ない状況です。今回の体験会の実施には、一人ひとりが抱く未来のイメージがより近いものとなり、今後より同じ方向を見据えた上で議論や対話を進めていきたいという想いも込めました」
「Dream Onは、社会人と学生が有志で集まり、週末を中心に活動している団体です。『未来のタイムマシンの実現』をテーマに掲げ、これまでSkyDriveさんなどと共同で、空飛ぶクルマの機体開発に力を注いできました。今回のVRコンテンツはその過程で得た知識を活かしながら、体験される方が可能な限り、実際の飛行時と同じ感覚を得られるための工夫を細部まで施しています。映像はもちろん、風の出るタイミングや加速度の感じ方まで、未来を『五感』で体験していただくために開発しました」
「空飛ぶクルマの社会実装と言われると、まるでSFのような世界を想像される方も少なくないのではないでしょうか。しかし、現実の世界となる未来は、そう遠くありません。今まで以上に移動時間が短縮できたり、なかなか行きづらかった場所への移動が容易になったり、観光や街づくりをはじめとした様々な面で、良いインパクトを与えてくれるはずです。ビジネスの観点からも、経済の活性化はもちろん、私たちの暮らし方や時間の使い方にまで、ポジティブな変化を与えてくれるのではないかと期待しています」
今回は二日間を通して計30名を超える申込者が会場へ足を運び、VRコンテンツによる空飛ぶクルマの仮想飛行を体験。乗り換えの手間解消や移動時間の短縮など、利用者にとっての具体的なメリットをよりイメージする機会にもなったはずです。
登壇した3名のコメントにもあるように、空飛ぶクルマの実用化に向けた歩みは、少しずつ、しかし確実に前へと進んでいます。だからこそ、生活者がその活用や利便性について、想像だけでなく、体験を通して実感できる機会を設定し続けていくことが、ますます重要になるかもしれません。
空飛ぶクルマの社会実装は間違いなく、私たち生活者の日常にも大きな変化をもたらします。そうした変化をどのように受け取り、活用していくのか。TMIPを含め今回共催した企業・団体は、今後もそうした問いについて共に考え、行動する機会を生み出し続けていきたいと考えています。