事業成長の起点となる共創型アワードへ ——「TMIP Innovation Award 2024」表彰式を開催

近年、大企業における新規事業・イノベーション創出が重要な経営課題となりつつも、いまだ大きな成果を上げている企業は多くはありません。TMIPは「社内外の壁を越える」ことこそがイノベーション創出の鍵になると考え、大企業発の ‟新規事業創出“を表彰する制度「TMIP Innovation Award」を2023年に設立しました。

※「TMIP Innovation Award 2024」開催概要はこちら

そして2024124日、第2回の開催となる「TMIP Innovation Award 2024」の最終選考・表彰式を開催。最終選考に進んだ5つの事業の代表者によるピッチを経て、日経ビジネス賞、オーディエンス賞、優秀賞、最優秀賞が決定しました。

本記事では、そんな表彰式の様子をレポート。「大企業発の新規事業」の未来を明るく照らすべく、さらに進化した「TMIP Innovation Award」の一端をお届けします。

創造と共創の起点となるアワードを目指して

TMIP Innovation Award 2024」の最終選考・表彰式は、東京・丸の内を舞台にオープンイノベーションの現在と未来を探求する1Dayイベント「Marunouchi Crossing 2024」(ユーザベース主催、三菱地所特別協賛)の中で開催されました。Marunouchi Crossing 2024の開会あいさつでは、三菱地所株式会社 代表執行役 執行役社長・中島篤が、アワード開催への想いをこう語りました。

中島「私たち三菱地所は、ここ丸の内を舞台にさまざまなイノベーションを創出していきたいと考えています。しかし、そのためには自社の力だけでは不十分です。スタートアップ、大企業、大学をはじめとする研究機関、VCなど、さまざまなプレイヤーと手を組み、それぞれの強みを生かしながらイノベーション創出に取り組む環境、すなわち『イノベーション・エコシステム』を構築しています。

その一環として運営しているのが、TMIPです。TMIPは、300を超える団体が参加する国内有数のコミュニティに成長しました。そして、第2回を迎えたTMIP Innovation Awardは、大企業の新規事業創出の促進を目的としています。このイベントから、新たな価値の共創につながる出会いや、事業創造のヒントを得ていただければ幸いです」

三菱地所株式会社 代表執行役 執行役社長 中島篤

また、最終選考・表彰式の開催に先立ち、TMIP事務局の大淵鮎里が昨年度のアワードで最優秀賞を受賞した事業との共創事例や、アワードの位置づけを紹介。

大淵「昨年のアワードでは、アレルギー対応食の提供サービスを手掛ける京セラ発の新規事業『matoil』が最優秀賞に輝きました。アワード以降、『matoil』とTMIPは、オフィスエリアでありグローバル企業も多い丸の内のニーズを掘り下げ、グルテンフリー・ヴィーガン対応でランチミーティングにも適したベーグルを開発

さらに、JR東日本スマートロジティスクスと連携し、注文したアレルギー対応食を東京駅の冷蔵ロッカーで受け取れるサービスを開始しました。こうした新たな価値の創造は一社の力だけでは成し得ず、事業に込められた思いが共感を呼び、さまざまなプレイヤーとの共創につながったからこそ、実現できたことだと考えています。

私たちTMIPは、さまざまなプレイヤーを巻き込む事業創造にチャレンジし続けたいと考えております。2回目の開催となった今回のアワードでは日経ビジネス賞を新設し、副賞として同誌に事業内容の紹介記事を掲載。

表彰で終わるのではなく、新たな挑戦や共創のきっかけに、そして新規事業の成長の起点となるアワードを目指しています」

TMIP事務局 大淵鮎里

次の時代を見据えて、最終選考に残った5事業

 本アワードでは、過去5年間に大企業内で立ち上がった新規事業の中から、市場規模や革新性、社会インパクトとともに、事業創出マネジメントの仕組みや工夫など、さまざまな観点を踏まえて5つの事業を最優秀賞候補として選定。

審査員を務めたのは、ラクスルやケアプロなどさまざまな企業の創業に参加し、現在は新規事業創出の専門家として活動する新規事業家・守屋実さん、一般社団法人スタートアップエコシステム協会代表理事、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使などを務める藤本あゆみさん、日経BP 日経ビジネス発行人の松井健さん。また、特別審査員として早稲田大学大学院経営管理研究科や早稲田大学ビジネススクールで教鞭を執る入山章栄さんをお迎えしました。

審査員を務めた(左から)松井健さん/藤本あゆみさん/守屋実さん/入山章栄さん

事前審査を経て、最優秀賞候補に選ばれたのは以下の5事業です。

■最終候補事業一覧 ※50音順

新規事業名 : Archi-Hub
親会社名 : 株式会社竹中工務店
代表者 : 藤井康平さん
事業概要 : 建築リユース部材のプラットフォーム事業

新規事業名 : coordimate
親会社名 : 株式会社NTTドコモ
代表者: 飯野健太郎さん
事業概要 : ファッション相談アプリの運営、試着DXソリューションの提供

新規事業名 : SPARE-MARKET
親会社名 : 三菱商事マシナリ株式会社
代表者 : 今井香菜子さん
事業概要 : デジタルを活用した貿易プロセスの最大効率化サービス

新規事業名 : Talent Market Place
親会社名 : 株式会社野村総合研究所
代表者 : 河邊俊輔さん
事業概要 : 生成AIと共創する人的資本経営/HRDX

新規事業名 : MOONRAKERS TECHNOLOGIES
親会社名 : 東レ株式会社(*現在は東レから一部出資を受け事業スピンオフ。独立企業として運営中)
代表者 : 西田誠さん
事業概要:先端技術を搭載した“進化した服”によるアパレル事業

当日は、各事業の代表者が事業内容や立ち上げに至った経緯、事業に込めた思い、今後の展望などを語る約7分間の最終ピッチを実施。

ピッチを実施する、『Talent Market Place』の河邊俊輔さん

 各ピッチを聞いた審査員たちからは、マネタイズ戦略や規模拡大の展望などに対して、さまざまな質問やコメントが飛び交いました。

 全てのピッチが終了すると、審査員たちは「皆さんの想いが込められたピッチからたくさん刺激を受け、その熱量が真っ直ぐに伝わってきた」(藤本さん)「ここまでレベルの高いピッチイベントは滅多にない。日経ビジネスでも取材したい内容ばかりで、感銘を受けた」(松井さん)など、口々に5つの最終候補事業とピッチの内容を称賛。

 また、ピッチや質疑の様子は、グラフィック・クリエイター 春仲 萌絵さんによってリアルタイムでグラフィックレコーディングにまとめられ、会場内のモニターで公開されました。

リアルタイムで作成されたグラフィックレコーディング

受賞を事業推進の力に変え、価値創造のスピードを加速させる

 そして厳正なる審査の結果、最優秀賞に選ばれたのは株式会社竹中工務店の藤井康平さんが立ち上げた、建築リユース部材のプラットフォーム事業『Archi-Hub』でした。

最優秀賞を受賞した『Archi-Hub』の藤井康平さん

Archi-Hub』は、既存建物から再利用可能な建材を新たな建築にマッチングするサービスで、手数料無料のマッチングを軸に、代行出品事業、問屋・メーカーなどが処分に困っている建材のマーケットプレイス事業などを展開しています。

最終ピッチ後の質疑応答では「廃材を買う側にとってのメリットとはどのようなものなのか」「デベロッパーの緻密な施工プロセスに廃材リユースを組み込むことを、周囲をどう納得させてきたのか」といった質問が飛びました。また結果発表後には、各審査員から選考の理由や『Archi-Hub』に対する期待を込めたコメントが。

入山さん「社会的価値のある大企業発新規事業をぜひ周囲のサポートを受けて成長させてほしいです。」

藤本さん「すべての事業が、高い市場性と革新性を備え、大きな社会的インパクトを与えうるものでしたが、その中でも『Archi-Hub』は特に大きな社会的インパクトを生み出しうる事業だと判断し、そこを評価しました。TMIPでもサポートを続け、1年後には成果を報告してほしいと思います」

守屋さん「社内の各部署からは新規事業に取り組むことに対する懸念や反対意見も出たと思うが、それらを一つずつ解消して、今日ここに至ったのだと想像します。ここまでの努力や成長、その軌跡を評価したいという思いを込めました」

松井さん「社会を変えるイノベーションの裏には、必ず分厚い壁を壊してきた人がいます。『Archi-Hub』の前にも、まだまだ分厚い壁があると思いますが、それを壊すだけのパワーを感じました」

Archi-Hub』の発案者であり、事業責任者である藤井さんは今後の事業成長に向け、意気込みを語りました。

藤井さん「最優秀賞を頂けたことを大変嬉しく思います。また同時に、ここからが新たな挑戦の始まりだと感じています。建物から廃棄される建材や家具などを建築プロジェクト間でリユースする新たな商習慣を生み出すことで、150年続くスクラップ&ビルドの建築文化に変革を起こしていきます。」

その他の賞の審査結果は、以下の通りです。

新設された「日経ビジネス賞」に選ばれたのは、ファッション相談サービス『coordimate』。副賞として、日経ビジネス上での記事体広告1ページが贈られました。

日経ビジネス賞を受賞した『coordimate』の飯野健太郎さん

同じく今回新設された、観覧者の投票により決定される「オーディエンス賞」と「TMIP優秀賞」をW受賞したのは、貿易実務のDXを進める『SPARE-MARKET』でした。

 オーディエンス賞と優秀賞をW受賞した『SPARE-MARKET』の今井香菜子さん

同じく優秀賞を受賞したのは、東レ株式会社(*現在は東レから一部出資を受け事業スピンオフ。独立企業として運営中)で東レが持つ最新の先端技術と強力なサプライチェーンを駆使し、革新的なアパレル製品を消費者に直接届けている『MOONRAKERS TECHNOLOGIES』でした。

優秀賞を受賞した『MOONRAKERS TECHNOLOGIES』の西田誠さん

 生成AIを活用し、人的資本経営をサポートする野村総合研究所の新規事業『Talent Market Place』は入賞という結果になりました。

さらに大きな注目が集まる「大企業発の新規事業創出」をサポートする

 最終選考・表彰式は、会場となった丸ビルホールが満席となり、立ち見の観覧者も出るほどの大盛況のうちに終了しました。オーディエンス賞の投票先を決めるため、周囲の観覧者同士で「どの事業に共感できたか」「どのような市場で、どのような価値を創造できそうか」などを積極的に話し合う姿も印象的でした。

超満員となった会場の丸ビルホール

 昨年以上に、大企業においても社内発の新規事業やイノベーション創出に注目が集まっていることを感じさせる一日となりました。

 TMIPは、今後も新たな価値創造と共創のあり方を探求し、日本のイノベーション創出に貢献していきます。そして、新規事業担当者が取り組む事業創出およびイノベーションマネジメントの努力に寄り添いながら、本気の大企業の事業創造を支援する取り組みを継続してまいります。

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