【TMIPワーキング】サーキュラーエコノミーワーキング

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開催日時 2020/1/24 15:00スタート
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2020年1月24日(金)、DMO東京丸の内にて、「サーキュラーエコノミーワーキング」が開催されました。
今回はサーキュラーエコノミーの現状を紹介するとともに、参加された17社27名が5チームに分かれ、ディスカッションを行いました。

まずはモニターデロイトジャパンリーダーでデロイトトーマツコンサルティング執行役員の藤井 剛氏が登壇し、サーキュラーエコノミーの潮流を解説しました。

藤井氏:ゴミや資源循環の問題は、世界的に見て炭素の排出と同じぐらい大きなテーマとなっています。弊社では先日、19カ国の企業経営者を対象に意識調査を行ったのですが、その中で〈最も注力・対応している社会課題〉という質問でグローバルでも日本でもともにトップだったのが『気候変動/環境持続性』という回答でした

ですが、〈社会課題解決の取組みに注力する理由〉では、グローバルでは42%の回答を集めトップとなった『収益の創出』が、日本ではわずか1%。環境に対する意識はすごく高いのですが、それを収益に繋げるという意識が日本の企業にはまだ足りていないことが見てとれます。

今年、ダボス会議の会場よりライブストリームでのパネルディスカッションを行ったのですが、その際に丸紅の国分会長は『社会課題を先端で捉えてビジネスモデルに組み込む必要がある』とおっしゃっていました。従来のようにお客様が求める商品を作っているだけでなく、いろんな人を惹きつけていく大義がこれから非常に重要になっていくのではないでしょうか。社会課題はお金にならないというイメージがありますが、そうした領域に向けて誕生した企業もあり、彼らと一緒に何かすることで新たな収益に繋がる可能性もあるのではないでしょうか。

 

続いて、デロイトトーマツコンサルティングのシニアマネジャーの田中 晴基氏が登壇。内外のサーキュラーエコノミーへの取り組み事例を紹介しました。

田中氏:サーキュラーエコノミーは10年ほど前から大きな潮流となってきていて、フィリップスさんやGoogleさんといった大手が手がけるようになっただけでなく、Rubiconさんのようなスタートアップが育ってくるなどの動きがあります。

EUでは政府が主導してビジネスモデルのチェンジを促しているのですが、中でも目に見えて顕在化しているのがプラスチックのリサイクルですね。例えば再生プラスチックを一定の率以上使っていないと公共の調達基準にのせないとか、税金が高くなるといった動きがあります。

また、リサイクルとともにリペアも注目されていて、修理のしやすさをどの程度前提として設計されているのかをスコアリングするシステムも作られています。これは言い換えれば、サーキュラーエコノミーを意識していないとビジネスで勝てない世の中になりつつあるということだと思われます。

田中氏は続けて、プラスチック包装材の代わりに再生容器を安全性や洗浄性も含めて回すLoop社や、ユーザー自身が修理しながら使えるスマートフォン「FAIRPHONE」、小売り業者に日々返品される商品を再び在庫にするのか修理するのか処分するのかなどの煩雑な対応を代行するスタートアップ「optoro」の取り組みなどを紹介。サーキュラーエコノミーにおけるチャレンジの多様性を示しました。

 

小田急電鉄株式会社からは経営戦略部の久富 雅史氏と正木 弾氏が登壇。サーキュラーエコノミーに取り組んでいる企業の立場から具体的な内容を紹介。

久富氏:小田急線沿線には、都心の新宿から世田谷などの住宅地、神奈川県央、県西部等、田んぼや畑が広がる郊外エリア、箱根、江ノ島・鎌倉といった観光地等、多様なエリアで構成されています。同時に日本の社会課題が詰め込まれているエリアでもあることから、我々は、この地域を課題解決の先進エリアにしていきたいと思っています。

中でも一番大きな柱と考えているのが次世代モビリティです。現在は自動運転バスやオンデマンドの実装に向けたもの、MaaSの開発などが進んでいます。そのためのスマートフォン向けアプリ『EMot』のローンチや、オープンな共通データ基盤『MaaS Japan』も立ち上げ、各地の交通事業者さんとも連携を進めています。これらのサービスには『小田急』の名称が入っていませんが、これは沿線に閉じたサービスではなく、沿線の課題を解決することが日本全体へ向けての拡大に繋がっていくということを意識してのものです。

正木氏:循環型社会のベースにある廃棄物の削減やリサイクルを推進していくには、当社単独では限界があると感じていました。また、小田急沿線の街では中国や東南アジアの廃プラ受け入れ拒否の影響もあり、小さい商店や飲食店の集積する世田谷エリアでは、リサイクルどころか、ゴミの収集事業者探しにさえ苦労する状況も発生しています。収集事業者では、ドライバーも不足、処理費も高騰する等問題が顕在化するなかで、事業者間の連携は進まず、例えば、都市部の繁華街では、朝、同じ通りに異なる4社の収集車が並走する等、効率性が高まらない状況もあります。

私たちは鉄道や不動産をビジネスの柱としていますが、収集・処分の領域は、街のインフラとして、当社ビジネスとの親和性が高いことから、この分野で先進的な知見を有する米国のルビコン・グローバル社さんと提携することといたしました。ルビコンには収集ルートの最適化、収集状況のリアルタイム管理に加え、コスト削減にも繋がる資材の共同調達といった技術もあります。当社では、今後ルビコン社の技術を含め、テクノロジーを活用し、サーキュラーエコノミーの実現に重要な役割を果たすゴミ収集分野における課題に挑戦していきます。

最後に、こうした新たな取り組みをビジネスとして推進していくには、まずは自分たちの既存ビジネスの循環型を進めていく必要があります。ビジネスの検討を開始した頃に、弊社が運営する大規模商業施設の所在する自治体から、『この市で一番ゴミを出している事業者は小田急さんですよ』と言われて驚いたこともありましたが、まずは既存のビジネスの現状を把握したうえで、それらの解決にむけて真摯に取り組んでいくことが非常に大事だと考えています。

 

三菱地所株式会社サステナビリティ推進部の長井 頼寛氏も、大丸有エリアで実施されている取り組みを複数紹介しました。

長井氏:まず、『エコ弁』というお弁当箱のプロジェクトに取り組んでいます。これは使用済みのお弁当箱のフィルムの部分を取り外して、土台の部分を専用の回収ボックスで集め再利用することで、資源の有効活用を図るという取り組みになります。

次に『東京ユアコイン』というキャッシュレスを促進するサービスの実証実験を大丸有エリアで実施しています。例えばレジ袋を使わないとか、エコ弁をきちんと回収ボックスに入れていただくなど、SDGsに貢献する行動をとることでポイントが付与され、電子マネーとして利用できるというものになります。

三つ目が『あいのり便』という取り組みです。これは地方の農産物を高速バスの余剰スペースに積載して運ぶ、スペースを有効活用しましょうというものです。これによって生産者側のフードロス削減、輸送コスト削減につながる他、大丸有エリアにこれまで届かなかったような産地直送の野菜が届くといった販路拡大の効果もあります。以上三つの取り組みを紹介させていただきましたが、これを地球全体の力に変えていくには企業だけでなく個人個人や街の意識が変わっていく必要があるとも感じています。

 

休憩を一旦挟み、参加者が5チームに分かれ、サーキュラーエコノミーにおける課題やそれを突破するためのアイデアについてのディスカッションが行われました。

30分の話し合いの後、各チームから発表されたものには、「メーカーは買い替えよりも耐久性を重視し、長く使いたくなるカッコ良い製品を出していってほしい」「消費者のリサイクルに対するインセンティブをメーカーの利益にもつながるようにすることができるのではないか」「ゴミの分別によるメリットが見えない状況があるので、きちんと分別していればオフィスの賃料に反映されるなどのルールを作ってはどうか」「ペットボトルの代わりにマイボトル利用を推進するだけでなく、ボトル補充用の販売機も設置してはどうだろう」「ゴミ分別ができている方は信用スコアに反映されるなどのテクノロジー導入」など、様々なアイデアが登場しました。

最後に再びデロイトの藤井氏がマイクを持ち「ゴミの問題はすごく身近。一社では限界がありますが、こうした場でより良いアイデアを加速していけるのではないでしょうか」とディスカッションを締めくくりました。

一度お開きとなった後、会場では軽食とともに懇親会が行われ、各企業の方々が思い思いに意見を交換しあい、サーキュラーエコノミーワーキングは終了となりました。

 

■当日スケジュール
1.プレゼンテーション:サーキュラーエコノミーの潮流(デロイトトーマツコンサルティング)
2.プレゼンテーション:サーキュラーエコノミービジネス事例(小田急株式会社、三菱地所株式会社)
3.グループワーク:サーキュラーエコノミービジネスについてのワークショップ
4.フリーディスカッション:懇親会

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