金融業という立場でスピーディーに
オープンイノベーションを推進する

2021年に三菱UFJリースと日立キャピタルが経営統合して誕生した三菱HCキャピタルは、統合後初めてとなる中期経営計画の途上にある。新規事業開発のための3つの取り組みを通して見えてくるのは、従来の延長線上にはない変革に挑む姿勢だ。

10年後のありたい姿として『未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター』を掲げる三菱HCキャピタルは、2023年度に始動した「20232025年度中期経営計画」の中で、事業戦略としてビジネスモデルの進化・積層化を掲げている。

「従来の事業の収益性を向上すると同時に、変革を促す土壌を整え、変革を生み出し推進することで、これまでの延長線上にはない事業の創出を目指しています」と三菱HCキャピタル 取締役 常務執行役員 の佐藤晴彦氏は説明する。

具体的な取り組みの一つが『Zero-Gravity Venture Lab』(ゼログラ)だ。その名の通り、既存事業による重力にとらわれない発想のビジネス化を狙うもので、すでにファウンダープログラム(社内起業制度)から2つのアイデアが事業化検討段階に進んでおり、20244月からは第2期の案件選定が進行中だという。

スタートアップとのオープンイノベーションに向けても、3年間で100億円の『イノベーション投資ファンド』を創設し、12件(20247月末時点)の投資を実行済み。

「ゼログラは社員個人のやりたいことを起点としており、ファンドは当社とスタートアップとのつながりを起点としたものです」

さらに、社外との共創を仕掛けるチーム『CLAP』も202310月から活躍中。

「金融業という、カタリストになりうる立場を生かした取り組みだと自負しています」

顧客の強みを組み合わせ
新たな価値を創造する

経営企画本部デジタル戦略企画部の高橋良輔氏(上写真中央)は大企業同士のオープンイノベーションを通じた新事業創造チーム『CLAP』を立ち上げた。「例えばa社のA商品とb社のBサービスを組み合わせればXという新事業ができるのではと絵を描き、営業部門と一緒に関係各社に提案、実行しています」と高橋氏が語る通り、1社単独では実現できない新しい価値を生み出すために日々奔走中だ。

活動開始から約9カ月で組成案件は30件を超える。代表例は、同社とAGC、ジェイアール東日本企画の3社による「ディスプレー一体型ミラーを活用したサイネージへの企業内広告」事業開発に向けた協業だ。AGCから製品の説明を受けた翌日には提案を行い、2週間後には3社での話し合いが始まったという。

スピード感と創造性を兼ね備えたこの取り組みは社内外から好評だ。「社内営業部門からは、従来接点のなかった事業部門との関係構築や共創ができること、お客様からはオープンイノベーションを具現化できる点を評価いただいています」と高橋氏。

ファイナンサーという役割を超え、ステークホルダーの中心点で新事業を生み出す存在を目指し、“ともに挑むイノベーター”への道を着実に歩んでいる。

三菱HCキャピタルが描く10年後のありたい姿 詳しくはこちら

 

日経ビジネス2024年8月26日号に広告掲載

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