スタートアップ向けのPCサブスクを立ち上げ。「IT×金融」業界を越えて素早く事業検証を進める「戦略的パートナーシップ」の展望

新産業を生み出そうと挑戦を続けるスタートアップ。彼らが事業に全力投球できるよう、コーポレートITの体制構築を支援するサービスが生まれました。

柔軟に顧客のニーズに応えるPCのサブスクリプションを中心としたサービスを提供するのは、レノボ・ジャパン、三菱UFJ信託銀行、三菱HCキャピタルによる戦略的パートナーシップ。

 TMIP会員同士というつながりをきっかけに生まれ、TMIPという共通項があったからこそ、その後のプロジェクトの立ち上がりもスムーズだったといいます。

 大企業同士でパートナーシップを組み、素早く事業検証を進めてきた背景には、どのようなストーリーがあったのでしょうか。

 本記事では、このうちレノボ・ジャパンの中田 竜太郎さん、三菱HCキャピタルの石田 慶太さんに、両社が共通して抱いていた想い、パートナーシップ確立の裏側をお聞きしました。

 

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レノボ・ジャパン Head of Solution Business Development, Innovation &Transformation
中田 竜太郎

大学卒業後、三井物産に入社。インドやカナダでの新規事業開発リードや新規事業会社設立などの業務を経て、シリコンバレーでのベンチャー投資や新規事業開発に従事。2022年にレノボ・ジャパンに入社し、以降 レノボ全製品群横断での成長戦略・事業開発・オープンイノベーション・スタートアップ支援を統括。

グローバルTop3のアクセラレーターMassChallengeProfessional Judge &Mentor及び、女性やマイノリティ起業家を支援する米国最大級のコミュニティThe Fourth EffectExecutive Partnerも務める。

三菱HCキャピタル株式会社 営業統括本部 営業開発部 開発第一課長石田 慶太

大学卒業後、三菱UFJリース(現三菱HCキャピタル)に入社。リースをはじめとするファイナンスソリューションの法人営業に従事。2019年より営業開発部にてマネージャーを務め、現在はスタートアップやパートナー企業との協業による新ビジネス開発業務を推進。

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●INDEX
・一社では実現できない、スタートアップ・エコシステム発展のために生まれた戦略的パートナーシップ
想いは同じ。足りないピースを補うパートナー企業との良質な出会い
・信頼できるパートナーと共に小さく高速に事業検証を実行

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一社では実現できない、スタートアップ・エコシステム発展のために生まれた戦略的パートナーシップ

 2023年11月、レノボ・ジャパンと三菱HCキャピタル、そして三菱UFJ信託銀行の3社は、戦略的パートナーシップを締結しました。同パートナーシップは、PCサブスクリプションサービスの提供などを通じて、スタートアップ・エコシステムの発展への貢献をめざしたものです。

 このサービスでは、スタートアップが本業にリソースを集中できるよう、「箱を開けた瞬間から業務を開始できる」ことをめざして、企業が事業を推進するために必要な機能を網羅的にパッケージとして提供しています。

 コーポレートITに関わる導入・運用の知見やデバイス全般の供給をレノボ・ジャパンが担い、導入・運用における金銭的な負担を最小化する金融サービス機能を三菱HCキャピタルが担うことで、スタートアップが必要とする機能をシームレスに提供できる体制を構築しました。

 

このパートナーシップが生まれたきっかけは、レノボ・ジャパンが取り組んでいたスタートアップ支援事業「Lenovo for start-ups」でした。この事業の責任者であるレノボ・ジャパンの中田さんは、スタートアップ支援をはじめた背景をこう語ります。

中田「自社のアセットを活かし、新産業創出に取り組むなかで、スタートアップが本業へのリソース投下を最大化するための支援を行う『Lenovo for start-ups』を立ち上げました。

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)が主催するアクセラレーション・プログラムにパートナーとして参画したことで、スタートアップにとってコーポレートITのような本業ではないが必須の業務に時間がとられてしまうことはもったいない。そこを自社のアセットをつかって支援できれば、価値を発揮できるのではと考えたのです」

中田さんが立ち上げたコーポレートIT支援のパッケージは、スタートアップでの人的・時間的リソースの観点から貢献の手応えを得られるものでした。ただ、導入に必要な資金的リソースが障壁となってしまうという課題に直面したそうです。

レノボ・ジャパン 中田さん

想いは同じ。足りないピースを補うパートナー企業との良質な出会い

 この課題を乗り越えるためには、スタートアップ向けのコーポレートITにおける金融機能を担うパートナーの存在が必須。そこで中田さんは大企業で新規事業開発やオープンイノベーションに取り組むメンバーが集まるコミュニティであるTMIPに相談しました。

 TMIP事務局の紹介によって三菱UFJ信託銀行と出会い、さらに三菱HCキャピタルと出会いました。ファーストコンタクトから、どのように戦略的パートナーシップの締結まで進んだのでしょうか。

三菱HCキャピタル 石田さん

三菱HCキャピタルの石田さんは、中田さんと出会った当初のことを振り返り、「私たちが普段社内で議論していたやりたいことと、方向性が一緒だった」と語ります。

石田「自社のアセットを活用して、企業の課題を解決する新しいソリューションを模索する中で、PCのサブスクリプションサービスは当初から構想にありました。ただ、小ロットでPCの保管や運用をしてくれる企業が見つからず、構想を実現するのは難しい状態。中田さんと出会ったのは、そんなタイミングでした。

中田さんからスタートアップ・エコシステムに対して抱いている想いに強く共感したこと。描いているサービスの構想は私たちがやりたかったことと方向性が同じだったこと。当社の中期経営計画の施策の一つとして、スタートアップとの連携を強めていこうとしていたこと。いくつかの要素が重なり、ぜひ一緒にやりましょう、となりました」

3社が出会ったのは、2023年の7月。その出会いから、わずか4ヶ月後には戦略的パートナーシップについてのプレスリリースを出し、トライアルを始めるという非常に早いスピード感で物事が進んでいきました。

大企業の新規事業立ち上げは一社で進めるとしてもさまざまな調整等が必要になり、時間がかかってしまうことも珍しくありません。それが他社と共同で進めていくとなれば、より一層スピーディに物事を進めることは困難です。

この3社の取り組みは、パートナーシップの締結から、サービス立ち上げ、トライアル実施まで、非常に素早く、具体的な活動の実行につながった点が大きな特徴です。

中田TMIPという触媒があったことで、一から関係を築くのではなく、さまざまなことを共有できた状態から始めることができました。互いに一定の信頼がおけるという前提の上で、『できること・できないこと』を含めオープンに議論できました。それが実現までのスピードにつながったと思います」

石田「互いにTMIPの会員であることで、オープンなマインドを持った企業であり、新規事業を生み出すことに真剣であり、そして『大企業ならではの新規事業を生み出すハードル』があることを始める前から共有できていた。これは非常に大きかったですね」

 

信頼できるパートナーと共に小さく高速に事業検証を実行

中長期のゴールや価値観の目線合わせが明確になっていた企業同士でのパートナーシップだったからこそ、事業の仮説検証もスピーディに進みました。東大IPCとのトライアルを実施し、実際にサービスとしての手応えを確かめていきました。

このトライアルを通じて、PCサブスクリプションサービスがスタートアップのコーポレートIT体制構築における、金額負担を最小化し、柔軟な体制の構築を可能するという仮説が検証できたといいます。

石田「このトライアルからは多くの学びが得られました。たとえば、当初は毎月更新の契約を想定していたところ、スタートアップにとっては更新にかかる事務手続きも負担だとわかり、負担軽減のため数ヶ月での契約にシフトするなど、サービスとしての改善点も明らかになり、柔軟に対応しました」

トライアルでの手応えを得て、このパートナーシップは次にどのようなことをめざしているのでしょうか。

中田「まずは、このサービスの利用者を増やして、スケールさせていくことをめざします。その先には、スタートアップの業種によって、提供していく製品群を広げていくことも視野に入れています。

たとえば、ディープテックやロボティクス、宇宙関連のスタートアップであれば、計算能力の高いスペックのPCが必要になります。スペックがあがれば、それだけコストもかかってしまいますが、私たちのサービスを利用してもらえれば、柔軟に必要なPCを提供できるはずです」

 スタートアップ・エコシステムの発展のために、スタートアップが必要とするさまざまな製品をサブスクリプションで提供していく深化に加えて、スタートアップ以外の対象に対してサービスを提供していく探索の可能性についても言及します。

石田「コーポレートITの体制構築が負担となっているのはスタートアップに限りません。例えば、SMBと呼ばれる中堅・中小企業にも、同様のニーズがあるはず。そういったニーズにも対応できるよう、アイデアを膨らませています。今回のようなPCサブスクリプションにとどまらず、双方の強みを活かして提供機能を拡大しながら、5年後、10年後も良い関係を続けていきたいですね」

中田「このパートナーシップがめざしている未来が実現すれば、事業に必要不可欠となっているPCを中心としたコーポレート・デバイスとの関わり方が『所有』から『利用』へと変化していきます。そうなれば、成長産業や新規事業に取り組む挑戦者たちにとって事業立ち上げにかかる負担が減るだけでなく、成長フェーズに突入した際の柔軟なリソースの調達も可能になります。きっと、新たな産業を生み出すための強力な支援ができるはずです」

会社の垣根を超え、志を同じくする仲間としてTMIPを通じて出会った二人。戦略的パートナーシップを締結し、スタートアップ・エコシステムのみならず、日本のイノベーション創出のインフラ構築をめざして歩んでいきます。

 

【「Lenovo Pro」とは】

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本件に関するお問い合わせ
レノボ・ジャパン合同会社
・専任担当者:楠田裕己
・メールアドレス:start_ups@lenovo.com

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