辻木 勇二
フォレストデジタル株式会社 代表取締役CEO
株式会社メルペイ前取締役。三菱UFJ銀行投資銀行部門を経て財務省に入省。開発金融専門官として地球環境課題を担当し、国連気候変動交渉や緑の気候基金の立上げに携わる。その後IT企業GREE、ヤフーの新規サービス部長等を経て、2018年にメルペイで金融事業の担当役員を務める。(一社)十勝うらほろ樂舎発起人。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院卒。
関山 翔太
株式会社JTB 東京中央支店 営業第一課グループリーダー
大学を卒業後、JTBに入社。新卒より7年、法人営業として各種民間企業・自治体等、多岐にわたる法人を担当。2023年よりマネージャーとしてプロジェクト管理などを行いつつ、その傍らで自社のアセットを活用しながら様々な企業とのコラボレーションを推進。
畔上 泰彦
TMIP事務局(三菱地所)
ゼネコンの技術研究所にて気候変動が建物や街に与える影響に関する研究や街区内での人の行動選択に関する研究に従事。2023年より三菱地所にて、大企業を中心とした新規事業やイノベーション創出のためのオープンイノベーションプラットフォームTMIP(Tokyo Marunouchi Innovation Platform)の運営を担当。主に大企業・スタートアップ・大学との実証実験を推進。博士(理学)
スタートアップの技術と大企業のリソースを掛け合わせ、新たな事業を生み出す。そんな取り組みに挑んでいる企業が増えています。事業化に向けて、さまざまなリスクや収益性などを確認するため、実装実験を実施する例も多く見られるようになりました。
2024年2月に開催されたイベント「「十勝に行こう!『なつかしさと新しさが混じりあう』浦幌町から十勝の魅力をお届け。」も、そんな実証実験の一つです。このイベントは、フォレストデジタル株式会社、株式会社JTB、北海道十勝郡浦幌町、三菱地所株式会社、TMIPが協働し、企画・開催しました。
本シリーズは、これまでTMIPが取り組んできた各プロジェクトの軌跡を紹介するもの。今回は、このイベントの企画・運営において中心的な役割を担ったフォレストデジタル株式会社 代表取締役CEOの辻木勇二さん、株式会社JTB 東京中央支店 営業第一課でグループリーダーを務める関山翔太さんをお招きし、TMIP事務局の畔上泰彦を交えて、プロジェクト運営の裏側をインタビュー。3人が口を揃えて「想像以上の成果が得られた」と語った取り組みを伺いました。
プロダクトの新たな活用方法を見出す「実証実験」としてのイベント
2024年2月、東京・丸の内にいながら十勝・浦幌町の魅力を体感できるイベント「十勝に行こう!『なつかしさと新しさが混じりあう』浦幌町から十勝の魅力をお届け。」が開催されました。このイベントの概要と目的について、TMIP事務局の畔上はこう語ります。
畔上「イベントの目的は、実証実験です。このイベントは会期を二分割し、前半の期間ではフォレストデジタルの空間型VRサービス『uralaa(うらら)』により、十勝・浦幌町の自然への仮想没入体験を提供。
一方、後半の期間では『uralaa』を用いず来場者に観光案内を提供し、いずれの期間でもその場で十勝・浦幌町への旅行の申し込みを募りました。前後半の来場者数や旅行への申し込み率を比較することで、『uralaa』がどれだけ旅行商材の販売に寄与するのかを、定量的なデータによって示すことがイベントの主な狙いです」
フォレストデジタルが開発・展開する空間型VRサービス『uralaa』は、日本全国の美しい自然に没入し、ウェルビーイング向上効果を提供することを目的に、商業施設などで利用されています。その効果については、明確なエビデンスが存在しますが、その他の用途、たとえばマーケティングなどへの活用については、有効なデータを集められていませんでした。そこで、フォレストデジタルと豊富な旅行商材を持つJTB、そしてTMIPが手を組み、今回のイベントを企画することになりました。
TMIPはイベント会場などを含めたアセットの提供と、プロジェクトの進行管理を担当。JTBは会場で配布する旅行電子割引クーポンの発行やイベントのオペレーション設計、来場者の旅行相談に対応するための窓口の開設を、フォレストデジタルは『uralaa』を始めとするコンテンツの提供を担い、共にイベントをつくり上げていきました。
「空間VRによって、行動変容を喚起できる」ことを実証する
フォレストデジタルとJTBは、どのような思いを持ってこの取り組みに参画したのでしょうか。フォレストデジタルの代表取締役CEOを務める辻木さんは、「『uralaa』がマーケティングにも有用であることを示すためのデータを集めること」の背後にある思いをこう述べました。
辻木「2019年、『テクノロジーは私たちを幸せにしているのか?』という問いに答えを出すために、フォレストデジタルを創業しました。その後、テクノロジーを活用して、人々のメンタルヘルスやウェルビーイングに寄与することを目的に『uralaa』を開発し、提供しています。
私たちは『uralaa』によって、『デジタルな体験を、リアルな行動のきっかけにすること』もできると考えています。もちろん、デジタル空間での体験にも価値はあると思っていますし、そこでしかできないこともたくさんあります。
でも、やはりリアルな空間でしか得られない体験や経験もあるはずです。『uralaa』はどこか遠くにある場所を旅するような没入体験を提供していて、この体験は実際に『その場所』に行くことを後押しするはずだと考えてきました。しかし、その主張の根拠となるデータが取れていなかったんです。そういった意味で、TMIPとJTBさんとの取り組みは、我々にとって大きなチャンスになると考えました」
JTBで他社とのコラボレーション企画の推進などを担っている関山さんは、「JTBとしての狙いは2つあった」と語ります。
関山「まず、旅行者に対する新たな情報提供の形を探りたいという思いがありました。インターネットなどを通じて、さまざまな情報に簡単にアクセスできるようになりましたが、情報が多すぎて取捨選択ができず『旅行には行きたいが、どこに行けばいいのかわからない』という方は少なくないと思います。
私たちは、そのような方々に対して『直感的に』旅行先を選択できる機会を提供することで、行動変容を促したいと考えてきました。フォレストデジタルさんの『uralaa』には、まさにそういった行動変容を生み出す力があると感じたのです。ですから、まずは共に実証実験を進めてみようと。
もう一つの狙いは、地方自治体の魅力を伝えるための新たな手段を模索することです。私たちは日々さまざまな自治体の魅力を伝えるお手伝いをしており、コンテンツをつくってはいるものの、もっとできることはあるはずだと考えています。
『uralaa』を知ったとき、地方自治体の魅力を伝えるための手段として、大きな可能性を感じました。そのような観点からも連携できることがあると感じ、今回の協働につながっています」
プロジェクト立ち上げのきっかけは、『uralaa』を交えたイベントでの出会い
では、いかにしてこのプロジェクトは始まったのでしょうか。立ち上げのきっかけは、ある「交流イベントだった」と畔上は言います。
畔上「直接的なきっかけは、丸の内で開催された、地方創生をテーマにした交流イベントでした。そこで辻木さんに出会い、その場で『uralaa』を体験。そのときはまだ具体的なアイデアはなかったものの、他社も交えて何かできることがあるのではないかと考えました。
地域創生という切り口では『uralaa』と『旅行』という領域は、とても相性がいいのではと思い、TMIP会員であるJTBさんとフォレストデジタルさんをつなぐことに。関山さんに『uralaa』というプロダクトがあることを伝えたことでプロジェクトが動き始めました」
関山さんは、「社内でもVRやARを活用したマーケティングを検討していたこともあり、ぜひ話を聞いてみたいと思った」と畔上からの打診を受けたときのことを振り返ります。一方の辻木さんもまた、旅行というドメインでの『uralaa』の活用を以前から模索していたそうです。
しかし、事業化やその手前にある実証実験には踏み切れていませんでした。その背景には「スタートアップならでは」の課題があったと言います。
辻木「畔上さんからお声掛けをいただく前から、自治体からの発注を受けて、観光のPRに『uralaa』を活用することはありました。その中で、旅行会社と協力できれば、よりたくさんの自治体に貢献できるし、事業も成長させられるのではないかという思いを持つようになりました。
しかし、私たちは小さなスタートアップですので、リソースが足りず、旅行会社への提案に行く余裕がなかったんです。可能性はあると感じながらも、一歩を踏み出せていないという状況が続いている中で、畔上さんから『JTBさんと何かできないですかね』とご提案をいただいたので、『渡りに船』ではないですが、とてもありがたかったですね」
自治体を巻き込み、実現した精度の高い実証実験
その後3社は、「各社がどのような役割を持つか」「何を目的とするか」「その目的を果たすために、どのようなコンテンツを用意するか」など、プロジェクトの詳細を詰めていきました。その中で特にこだわったのは、「実証実験としてイベントを実施すること」だったと辻木さんは言います。
辻木「『uralaa』がある期間とない期間では、どれだけ来場者数に差があり、どれだけ旅行への申し込み率が変化するのかなど、詳細なデータを取ることにこだわりました。
ただ、そのようなデータが欲しいのはあくまでも私たちフォレストデジタル側の都合なので、正直に言えば、当初は畔上さんと関山さんは同意してくれるかなと不安に思っていたのですが、お二人とも『ぜひやりましょう』と言ってくださった」
そうして、A/Bテストを実施することが決まりましたが、実施に向けてはいくつかのハードルがありました。その一つが「正確なデータを取るためのオペレーションの確立」です。
来場者に対して、JTB公式ホームページを案内し、そこから十勝エリアへの旅行を予約していただいたとしても、その方が『uralaa』がある期間とない期間のどちらに来場した方なのか、あるいはイベントに来場すらしておらず、たまたま十勝・浦幌町への旅行を予約しただけなのかの判断が付かず、正しくデータを取ることはできません。
そこで、『uralaa』がある期間とない期間で、異なるQRコードを印刷したチラシをイベント会場に設置。そこからJTB公式ホームページにアクセスし、旅行を予約していただくことでそれぞれの期間の申込者数を捕捉することになりました。
しかし、有意なデータを取るためには、いずれの期間でも一定の申し込み数を得なければなりません。来場者限定のクーポンを発行することで、申し込み数を担保する案が持ち上がりましたが、クーポンを発行するためには資金が必要です。このプロジェクトは、各社が持ち出しの少ない資金で運営されていたため、クーポン発行に割くための余裕がなく、壁に直面することになりました。いかにしてこの壁を乗り越えたのでしょうか。
辻木「浦幌町を巻き込み、資金を提供していただいたんです。フォレストデジタルが本社を構える浦幌町の人口は約4,200人(2023年時点)と、小さな町ですが、小さな町だからこその一体感があります。フォレストデジタルもこの町に支えていただいていると言ってもいいほど、たくさんの方に応援してもらっているんです。
行政の方々ともカジュアルに相談できる関係を保てているので、このプロジェクトへの協賛を打診することにしました。ただ、相談を持ちかけたのは2023年の11月ごろのことだったので、もしかすると難しいかなと。というのも、自治体の予算は春に年間を通した使い道を決めているので、イレギュラーな支出をするのは簡単なことではないはずなんです。
しかし、浦幌町の産業課長に相談をしたところ、すぐに町長に稟議を上げてくださり、町長は『それは絶対やるべきだ』とすぐに決断を下してくれました」
浦幌町がこのプロジェクトに資金を提供してくださったのは、地元企業であるフォレストデジタルを後押ししたいという気持ちもあったのかもしれません。しかし、それ以外の理由もあったはずだと辻木さんは言います。
辻木「想像にはなってしまいますが、浦幌町としても費用対効果が高い施策だと判断したのだろうと思います。浦幌町の知名度は高くありません。全国的にはもちろん、同じ北海道の札幌に住んでいる方でも、『名前は聞いたことはあるけど、何があるかは詳しく知らない』という人が少なくない。
そのような町のPRを、東京のど真ん中、丸の内でできることなんて滅多にありませんよね。そのような意味で私たちの取り組みに魅力を感じて、資金を提供してくださったのだと思っています」
コンバージョン数が4.4倍に。プロジェクトを通して得た、確かな手応え
浦幌町の協力を得て、プロジェクトは一気に加速。そして2024年2月、三菱ビルにて「十勝に行こう!『なつかしさと新しさが混じりあう』浦幌町から十勝の魅力をお届け。」は開催され、盛況の内に幕を下ろしました。「実証実験」にこだわったという辻木さんに、どのような成果を得られたかを問うと、こんな答えが返ってきました。
辻木「結論から言えば、想像以上の成果が得られました。まず集客数については、『uralaa』を設置しなかった期間と設置した期間では、2.4倍もの差がありました。次に相談件数。今回のイベント会場にはJTBさんからスタッフを派遣していただき、旅行に興味を持った来場者の方から、その場で相談を受け付ける体制を整えていたんです。相談件数は、4.0倍ほどの差がありました。
そして、コンバージョン数です。このイベントでは、『チラシに掲載されているQRコードを読み込み、JTB公式ホームページにサクセスすること』をコンバージョンと定義していたのですが、『uralaa』を設置した期間のコンバージョン数は、設置しなかった期間の4.4倍を記録したんです。
この結果が示唆するのは、『uralaa』が旅行へのモチベーションと行動を喚起したということだと考えています。というのも、集客数が2.2倍になり、コンバージョン数は4.4倍になったわけですが、集客数だけに着目すれば、遠目から空間VRを見た方が『なんかおもしろそうなことをやっているな』と興味を持ち、足を運んだだけという可能性も考えられます。
しかし『実際にQRコードを撮影し、JTB公式ホームページを訪問した方の数が4.4倍になったという事実』は、来場し『uralaa』を体験する中で、旅行へのモチベーションが高まったということを示しています。この『2.2倍』と『4.4倍』という数字の差が、『uralaa』が行動変容に寄与するという根拠になると考えています」
辻木さんはフォレストデジタルを立ち上げる以前、GREEやヤフー(現・LINEヤフー)、メルペイなどのIT企業で経験を積んできました。「インターネットの世界におけるA/Bテストでは、既存の施策Aと新たな施策Bを比較して、Bのコンバージョンレートが3%でも向上すれば、Bは優れた新施策だと見なされる」と辻木さん。
長年、この「数%」のためにさまざまな施策を講じてきた経験を持つ辻木さんだからこそ、「『uralaa』によって4.4倍の差が生まれる、つまり440%も向上することは、想像すらしていなかった」とこのプロジェクトを通して得られた成果の大きさを表現しました。
恊働でつくり上げたのは、「実証実験のモデルケース」
一方、VRやARのマーケティング活用の可能性を探るためにこのプロジェクトに参画した関山さんは、どのような手応えを得たのでしょうか。
関山「私も会場に足を運んで、旅行相談を受け付けていたスタッフに話を聞いたところ『「uralaa」を設置している期間の方が、寄せられる相談が具体的だった』と。やはり、ポスターやパンフレットだけでは、その場所のことをイメージしきれず、なかなか行動にはつながりません。
ですが、『uralaa』が提供する空間に身を置くと、まるでその場に行ったかのような体験ができ、ポスターやパンフレットでは伝えきれない細部が気になるのだろうと思います。そのため、来場者の中に『これってどういうものなの?』『これは浦幌町のどこにあるの?』といった具体的な質問が生まれたのではないでしょうか。
そして、具体的な疑問が生じると、現地に行って確かめたくなりますよね。だからこそ、チラシを手に取り、QRコードを読み込んで、実際に旅行を検討し始めた方が増えたのではないかと想像しています。私たちとしても『uralaa』のようなプロダクトを、マーケティングに活用できる実感を得ましたね」
プロジェクトの進行管理を担っていた畔上もまた「想像以上の成果が得られた」と振り返ります。辻木さんが挙げたような定量面の成果はもちろんのこと、それ以外の面でもこのプロジェクトを通して得た成果は大きかったそうです。
畔上「このイベントはさまざまなメディアにも取り上げていただき、大きな反響がありました。それも一つの成果ではあるのですが、TMIPとしては『TMIP会員であるフォレストデジタルさんとJTBさんが成果と新たな事業への手応えを得たこと』、それ自体が何よりも成果です。
また、実証実験のモデルケースをつくれたという手応えがあったことも成果の一つです。定量的に評価が可能で、定性面の成果も大きいプロジェクトを、『スタートアップ×大企業×行政』と多様な主体の協働によってつくりあげることができたのは、TMIPにとっても大きいこと。
さまざまな観点から、TMIP会員のみなさんにとっての範となるプロジェクトになったと思っており、その点でも意義のある取組みであったと感じています」
ポイントは、率直に「できる」「できない」を伝えられるフラットな関係性を築けたこと
規模や文化、仕事の進め方などが異なる「パートナー連携」には困難が付きもの。ましてや、行政をも巻き込んだこのプロジェクトをスムーズに進行するのは簡単なことではなかったのではないでしょうか。
そんな考えから、進行面での苦労を問うと「苦労はあまり感じなかった」と意外な答えが返ってきました。その理由を、関山さんはこう語ります。
関山「おっしゃるとおり、複数社が協働するプロジェクトではその進行管理が問題になることが多いですよね。でも、今回のプロジェクトで進行面の問題が起こらなかったのは、畔上さん、ひいてはTMIPの存在があったからこそだと思っています。
今回共にプロジェクトに挑んでみて、TMIPは複数社が参加するプロジェクトのマネジメントに非常に長けていることを感じました。『次はこれを決めましょう』『こういった順番でプロジェクトを進めていきましょう』と、明確に進むべき道を示してくださった。
これは、これまでさまざまな共創プロジェクトを推進してきたTMIPならではの強みだと思います。私たちとしてはまったくストレスを感じることなく、自らの役割に集中できたので、とてもありがたかったです」
辻木「私たちもスタートアップとして、大企業との共創に取り組むことは多いのですが、そのほとんどが1対1の関係なんですよね。つまり、私たちと1社の大企業でプロジェクトに取り組むことが多いので、TMIPを運営する三菱地所さん、JTBさんという2つの大企業に加え、行政も含めた取り組みに挑むのは初めてのことでした。
そもそも、こういった多様な主体を巻き込んだプロジェクトを生み出せることがTMIPの特徴だと思いますし、そのプロジェクトをしっかり前に進める力を持っているのがTMIPなのだと感じました」
今回のプロジェクトを推進する中で、畔上は「それぞれの企業が短期的な経済メリットは度外視して、ある意味では手弁当で実施する実証実験だからこそ、すべての関係者がフラットな関係を保ち、フラットにメリットを享受することを心がけていた」といいます。
「フラットな関係だからこそ、お互いにはっきりと言いたいことが言えた。それが大きかったと思う」と応じたのは辻木さんです。
辻木「関係者全員ができることは『できる』、できないことは『できない』とはっきり伝え合っていたことが、プロジェクトのスムーズな進行につながったのではないでしょうか。たとえば、関山さんも金銭面の支出などについて『うちはここまではできるけど、ここから先は無理です』とはっきり言っていましたよね。
そのように、各社が『できる』『できない』を明言していたからこそ、課題が早く見つかり、みんなでその解決策を議論することができた。たっぷり時間があるというプロジェクトではありませんでしたが、それでも余裕を持ってアウトプットができたのは、率直に『やれる』『やれない』を言い合える関係を築けていたからこそかもしれませんね」
実証実験を通して生まれた、新たな展望
大きな成果を挙げたプロジェクトは、各社の未来にどのような影響を与えたのでしょうか。お三方に、個人的な思いも含めた展望を尋ねました。
関山「さまざまな地方自治体の魅力を発信するため拠点を立ち上げる、あるいは、発信のための仕組みを整えていきたいと考えるようになりました。事業的にもインパクトがあると思いますし、今回の取り組みを通して、地方自治体に貢献するための方法は従来のものに限らないと感じたんです。
そしてこれはあくまでも個人的な希望でしかありませんが、フォレストデジタルさんやTMIPと共に取り組めたら嬉しいですね」
辻木「観光という領域に限ったことではありませんが、テクノロジーによって実現できることはまだまだあると考えています。人とテクノロジーの関係はこれからも変わっていくはずですし、私たちとしてはよりよい関係を築くことに貢献していきたい。
今回の実証実験を通して、私たちのプロダクトが観光領域に新たな価値を提供できるという手応えは得られたので、これからもいろいろな可能性を探究すべく、新たな機能やプロダクト開発を進めていきたいです」
畔上「今回のプロジェクトを通してとてもいい経験をさせてもらい、モデルケースとなるような事例になったと感じているので、これからもスタートアップと大企業による実証実験には取り組んでいきたいですね。
そういった取り組みを通して、参加した企業のみなさんが新たな事業の芽を見出し、新たな柱になるまで育て上げるためのお手伝いができれば、TMIPとしてこれ以上のことはありません」