陸上養殖でサステナブルなサーモンをつくる。FRDジャパンの挑戦――TMIP×文化放送スペシャル企画「未来の食から見える世界とは?」(前編)

食分野周辺ではテクノロジーを活用したイノベーション、いわゆる「フードテック」に注目が集まっており、フードビジネスが大きく変貌しようとしています。一方で、増加し続ける世界人口を養う食糧不足問題やフードロス(食品廃棄)を筆頭に、食にまつわる分野がさまざまな社会課題を抱えているのも事実です。食分野でのイノベーション創出は、我々に豊かさや潤いをもたらしてくれ、また社会が直面する課題を解決しうるものでもあります。

未来の食卓から見える世界はどのようなものなのでしょうか?
また、どんな新しいビジネスが生まれるのでしょうか?

2022518日に開催された、オープンイノベーションプラットフォーム「TMIP」と文化放送による「浜松町Innovation Culture Cafe」スペシャル企画として開催した『丸の内Innovation Culture Cafe「~未来の食から見える世界とは?~』。食ビジネスのスペシャリストたちと早稲田大学ビジネススクール入山章栄教授らが登壇し、会場となった丸の内二重橋ビルにあるDMO 東京丸の内 Marketing Suiteに多くのお客様をお迎えした他、オンラインでもたくさんの方にご参加いただきました。

この記事では、イベント前半に行われたトークディスカッション「陸上養殖の現在地点と未来」の内容についてお伝えします。登壇いただいたのは、FRDジャパン取締役 COO 十河哲朗さん、デロイト トーマツ コンサルティング/シニアマネジャー 坂口直樹さんです。

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<登壇者のご紹介>

今回のイベントでは早稲田大学ビジネススクール教授・TMIPアドバイザーの入山章栄さんをファシリテーター役に迎え、ゲストには元乃木坂46で現在はプロ雀士・麻雀カフェ「chun.」オーナー&店長の中田花奈氏の他、「未来の食」に携わるイノベーター、識者の方々を迎えました。司会は文化放送砂山圭大郎アナウンサーが務めました。イベント前半で登壇されたゲストは次のお2人です。

FRDジャパン取締役 COO 十河哲朗:
三井物産時代、陸上養殖を手掛けるFRDジャパンと出会い、同社のシステムを活用したサーモン養殖事業を三井物産に提案。現在は三井物産を退社。COOとしてFRDジャパンに参画。

〇デロイト トーマツ コンサルティング/シニアマネジャー 坂口直樹:
Future of foodをテーマに、食や農に関わるデジタル変革・社会課題解決型ビジネスに取り組む。

 

<番組紹介>

「浜松町Innovation Culture Cafe」(通称:浜カフェ)は、文化放送で毎週月曜日19時から放送される番組です。パーソナリティは早稲田大学ビジネススクール教授・入山章栄氏。毎回、さまざまなジャンルのクリエイターや専門家、起業家をゲストに迎え、社会課題や未来予想図などをテーマに学び溢れるトークを展開しています。podcast他でも配信中です。

(番組サイト)浜松町Innovation Culture Cafe | 文化放送 (joqr.co.jp)
(podcast) https://podcastqr.joqr.co.jp/programs/hamacafe 

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トークより~陸上養殖で拓ける食の未来とは?~

人口増加にともなうたんぱく質源の確保は、今や大きな課題となっています。牛や豚、鶏だけではありません。1人あたりの魚の消費量も急速に増えており、値段も高騰中。とくに心配なのが世界中で人気の養殖サーモンです。産地がノルウェーやチリに集中しているだけに、近い将来、生産量が頭打ちになるのではと懸念されています。長距離航空輸送による温室効果ガス排出の問題も深刻といえるでしょう。

そこで十河さんらFRDジャパンが取り組むのがサーモンの陸上養殖。同社では陸上に置いた水槽にバクテリアを活用したスーパー濾過装置を取り付け、環境管理を自動化。排水を出さない、環境にやさしい生産体制をととのえています。 

「水さえあれば砂漠地帯でも宇宙空間でも魚が生産できます」と十河さん。実際、養殖場があるのは千葉県や海のない埼玉県。首都圏近郊で養殖し、地産地消をめざすことで、輸送による温室効果ガスの排出を抑えます。

いいこと尽くめのように思える陸上養殖ですが、イベントでは「じつは事業化に成功している企業は世界的にもまだない」という意外な事実が明かされました。ハードルとなっているのは電気代や設備の減価償却費などの固定費。解消するには大規模化しなければなりませんが、目標生産量到達への道のりは険しいようです。 

単価を上げるにはブランド化も必要ですが、日本では天然魚人気が根強いうえ、食のサステナビリティに対価を払う意識はまだまだ根づいていません。坂口さんからは、「例えば認証マークをつくるなどして、新たなマーケットを作っていくことも食のサステナビリティを広げるきっかけになるのでは」という貴重なアイデアをいただきました。

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