TMIPと三菱地所は、野村総合研究所の協力、京都大学学際融合教育研究推進センターの監修のもと、2022年3月22日と23日の二日間にわたり「丸の内100人論文開催記念イベント」を開催しました。
イベントでは研究テーマの一斉展示に加え、「学問からの便り~この研究、企業と共同できる!?」と「地域×学問で何ができるか?」をテーマとしたトークセッションも実施。「100人論文」の企画を通し、アカデミアと企業の連携を促す試みとなりました。
“本音の意見交換”を通し、研究テーマを磨き込む「100人論文」
「100人論文」は、2014年に京都大学学際融合教育研究推進センターが始めた取り組みです。
「研究活動における醍醐味の一つである“本音の意見交換”を、学生がより安心してオープンに行える機会をつくりたい」という想いから、同センター准教授の宮野公樹さんが立案者となり、スタートしました。現在は京都大学だけでなく、名古屋や愛媛、広島など、様々な地域の大学が実践するまでに拡大。分野や専門領域を越えた対話を、非同期で実現する取り組みとしても注目を集めています。
今回の「丸の内100人論文」は、TMIPの活動テーマの一つである「大丸有エリアを起点としたオープンイノベーションの創出」を目的に企画されたもの。当日は「研究×ビジネス」と「地域×学問」のそれぞれを切り口とした二つのトークセッションも行われ、今着目すべき課題やイノベーションにつながる問いについて、訪れた方々とともに考えを深める時間となりました。
一つ目のセッションテーマは「学問からの便り〜この研究、企業と共同できる!?」。宮野さんに加え、日本たばこ産業株式会社D-LABディレクター兼株式会社グローカリンク取締役の西川信太郎さん、株式会社チェンジウェーブ代表取締役社長の佐々木裕子さん、株式会社野村総合研究所の徳重剛さんと粂井華子さんの計5名が登壇し、展示された合計68の研究テーマを一つひとつ見て回りながら、アカデミアとビジネス双方の視点から意見やアイデアを述べ合いました。
二つ目のセッションテーマは「地域×学問で何ができるか?」です。宮野さんと徳重さんに加え、鎌倉投信株式会社代表取締役社長の鎌田恭幸さん、ひろぎんエリアデザイン株式会社の淺野晃平さんが登壇。地域とビジネス双方の領域において、事業を通じて実践を続ける鎌田さんと淺野さんも交え、地域とアカデミアの共創可能性についてのディスカッションが展開されました。
研究者の熱量に触れ、“産学連携”の本質を問い直す機会に
二日間にわたるイベントについて、双方のセッションに登壇した徳重さんは以下のようにコメント。上滑りの産学連携ではなく、より本質的なそれを生み出すためのきっかけとして「100人論文」のような取り組みが果たす役割は大きいはずと期待を寄せました。
徳重さん「『アカデミアとの連携を通じて、事業成長や新規事業創出を実現したい』。そう考え、ヒントを探るべくご来場いただいた方々も多くいるはずです。そうした方々にとって、アカデミアの方が日々考え磨き込んでいる研究テーマの魅力や面白さが、深く伝わる機会になったのではないかと感じています。
ともすれば、私たちビジネスパーソンはこうした研究活動に対し、『自分たちとはプロトコルが違う』、『言いたいことはわかるがまだまだ先の話ではないか』など、自分から距離をとってしまうケースも珍しくないのではないでしょうか。そうしたある種突き放した態度を示してしまうのではなく、アカデミアの方が持つアイデアや仮説、そして背景にあるエネルギーに対し、じっくりと耳を傾ける。『産学連携』という言葉を使うのであれば、そうした姿勢こそが重要であると、私自身も改めて実感しました」
また、「100人論文」の発起人であり今回のイベントを監修した宮野さんも、開催を通じて得た手応えを口にしました。
宮野さん「100人論文を『研究者とビジネスパーソンの意見交換』を主目的に実施したのは、これが初めてです。私自身にとっても文字通り『実験』となりましたが、結果として想像を上回る数の方々に訪れていただくことができました。今後も研究者が分野や属性を超えて本音で語り合ったり、研鑽を積んだりするための機会づくりに取り組んでいきたいです」
当事者の意思が込められた一つひとつの研究テーマと、それを上回るほどの熱量が込もったコメントの数々。ずらりと並んだ展示を眺めていくと、そこには非同期かつ匿名であるからこそ生まれうる“対話”が確かにありました。
TMIPは、産学官の壁を超えたパートナー同士の連携を推進する「プラットフォーム」としての役割を果たすべく、コミュニティ運営や政策提言などの活動を行っています。そうした現在進行形の活動だけにとどまらず、新たな機会を生み出し続けるために、「丸の内100人論文」のような優れたフォーマットをきっかけとした新企画にも、より積極的に取り組んでいきたいと考えています。