丸の内City DXパートナーズイベント

都市におけるDX(“City DX”)の可能性を広げる「丸の内City DXパートナーズ」

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【開催概要】
開催日時:2021/4/6 16:00スタート
登壇者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社/Deloitte Digital 森 正弥氏
株式会社野村総合研究所 徳重剛氏
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2021年4月6日、オンラインイベント『都市におけるDX(“City DX”)の可能性を広げる「丸の内City DXパートナーズ」』が開催されました。

「丸の内City DXパートナーズ」は、新型コロナによって人々の生活スタイルが変わる中、都市自体も変化しなければならないという危機感を背景に設立されたコンソーシアムです。

デジタルを使って街自体の仕組みや新しい機能を考え、参画されている各企業と一緒にニューノーマルに対応した都市のDXサービスを作ることを活動の目的としています。

今回のイベントでは、デロイト トーマツ コンサルティングの森正弥氏と、野村総合研究所の徳重剛氏が出演し、具体的にどのような考え方でDXが行われているのかについて講演いただきました。

デロイト トーマツ コンサルティングの森正弥氏のプレゼン

デロイト トーマツ コンサルティングの森正弥氏のプレゼン

森氏が所属する「Deloitte Digital」は、デジタルサービスやテクノロジーを活かしたデジタル化による組織変革やサービス構築を支援する、デロイト内のグローバルブランドです。

特に重視しているのがエクスペリエンス=体験。従来のカスタマーエクスペリエンスに加えて、働き手やビジネスパートナーのエクスペリエンスを包含したヒューマンエクスペリエンス=人間体験に基づくデータ活用や事業の創出に力を入れています。人間体験に基づくデジタル化とは何かについて説明しました。

森氏:世界各国での外出禁止、自粛要請、都市の封鎖というのは非常に大きなインパクトがありました。それに基づいて私たちは働き方の変更を余儀なくされました。

例えばリモートワークが始まったことによって、デジタル化が進むきっかけになったとも言えますが、果たしてDXはそれだけで良いのか。在宅リモートワークによって、かえってミーティングが密に設定され消耗してしまったり、新入社員や中途入社の方が出勤しなくなることで、人間的なコミュニケーションから隔絶され、結果、孤独感を強めてしまったりすることもあります。

さらに森氏は、コロナ禍において社会インフラを支えるエッセンシャルワーカーを例に、単純に今までやってきたことをデジタル化することがDXではないと説明します。

森氏:重要になるのが、先ほど触れた人間体験。意識の変化、顧客のニーズが、機能重視から体験重視へと変化していることが、様々な意識調査から見て取れます。

例えば82%の方は環境や社会への配慮をするようになり、91%の方は食品の無駄をなくしたいという意識が高まった。ネットを中心に情報収集するようになった方も増えたため情報信憑性への意識も高まり、94%の方は情報を見極めてから慎重に行動したいと考えるようになったとの調査結果もあります。

ここで、ニーズの変化や情報信憑性へのヒントとして、森氏が取り上げたのが、中国で盛り上がっているライブコマース。オンラインを通して店員が顧客と接客するサービスです。

森氏:ライブコマースは、ECのように販売するのではなく、リアルタイムの対話コミュニケーションを通じて商品販売を実現するデジタルサービス。中には、視聴者との対話を心掛けることで、一人当たりのスタッフの売り上げが2019年と比較して倍以上になっているというブランドもあります。

重要なのはデジタル化して、単純に便利になったというわけではなく、ライブコマースという形で親密な接客や対話を作り出したことで、新しい価値のトレンドが作り上げられたということです。これこそ人間体験ということになると考えられます。

都市のDXはこうした観点を踏まえて進めていくべきではないか、と森氏は続けます。

森氏:ビッグデータに基づく様々なサービスについてもDXはありえるが、あくまでも個々人の体験を高める方向で拡張していくことが非常に重要。無理矢理デジタル化するのではなく、人間体験にフォーカスした仕掛けを組み込むことで初めて、DXの効果を高め、そしてより一段上のレベルに到達することができるでしょう。

野村総合研究所の徳重剛氏のプレゼン

野村総合研究所の徳重剛氏のプレゼン

野村総合研究所の徳重氏は、大企業各社がベンチャーとのオープンイノベーションに取り組んでいるものの、なかなか成果に繋がっていないという課題感を持っているとのこと。その中で特にAIなどのデジタル領域のベンチャー企業の特徴をあえて「出来合いの惣菜」と「一流シェフの料理」と例えた上で講演をスタートしました。

徳重氏:毎年10月に大企業とベンチャーのマッチングイベント『東京イノベーションリーダーズサミット』が行われています。ここで実際にあった話を紹介しましょう。

ある食品メーカーさんが『食と健康のAI、IoT活用』という漠然としたキーワードだけを携えて参加したところ、お客さんと非常に盛り上がったものの、なんの契約にも至らなかった。「何をしたいのかの設計図や未来予想図がある程度描かれていないと企業とベンチャーの座組みは難しい」と語ったそうです。

大企業とベンチャーが連携する際の座組みとして、大企業はデータやデータ獲得のためのチャネル提供をし、ベンチャーは企業が提供したデータを解析したりしてフィードバックするというのが一般的によくある形です。

この場合、実際には大企業も努力すれば、ベンチャーが行なっている解析やアルゴリズムの仕組みを自社で作れるかもしれない。ですが、同業他社も同様に狙っている分野であれば、すでに機能実装しているベンチャーと組んで早期サービス化することが重要です。早ければ早いほど良い、つまり「出来合いの惣菜」を買うことがゲームに勝つ、一つのパターンではないでしょうか。

また、自分たちではできなかった分野について、膨大な解析データを持つベンチャーと組むことでその壁を乗り越える場合がある。これが「一流シェフの料理」ということです。

そして、企業とベンチャーの連携の際、乗り越えるための壁がいくつも生じるケースもあるそうです。上層部がその重要性を理解してくれないケースから、知財交渉、マネージメントのあり方など、その壁は様々。徳重氏は、壁を乗り越えるためには、単純に、順序立てて進めていけばいい、とも限らないと話します。

徳重氏:こうした壁は、乗り越えられるものから解決していくしかない。ある案件を紐解くと、こういう構想があるから順序立ててこういう事業になったという単純なケースは稀で、とにかくできるところから解決している。言ってしまえば順番はバラバラです。紆余曲折するのは織り込み済みで、最後に整ったところでグランドデザインを描く、ということになります。

最後に、知財権をどうするかが問題になる、という話題にも触れました。

徳重氏:大企業はデータを提供し、スタートアップがエンジン(アルゴリズム)を提供するとして、大量のデータを食べて(分析して)賢くなったAIは誰の帰属するのかという、「親権争い」が起こってしまうことがよくある。

そこで例えば、知的財産権はあくまでスタートアップ側に帰属する、ただし業界のユースケースにおける独占的使用権は大企業に付与する、というような落としどころを明確にしておく必要があります。

企業とベンチャーの連携が当たり前になっていく中で、改めて気をつけなければいけないポイントは多々あるので、そうしたことに留意しながら活動を活性化いただければと考えています。

以上でこの日のイベントは終了。短いながらも濃密な講演となりました。

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