ワークショップ中の参加者

【TMIPワーキング】LGBTの感性を活かしたマーケティングでの向き合い方

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開催日時 2020/12/23
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2020年12月23日、オンラインにてTMIPワーキングが開催されました。今回のテーマは「LGBTの感性を活かしたマーケティングでの向き合い方」。

本日のテーマ

本日のテーマ

まずはLGBT総合研究所の森永 貴彦氏から、本日の進行を解説。続いて世の中の性の多様性に関する動向について話していただきました。

森永 貴彦氏

森永 貴彦氏

森永氏:日本で性的少数者の話題が大きくなってきたのは、渋谷区が同性パートナーシップ制度を導入、条例化した2015年以降です。現在は全国で60自治体が制度を導入し、交付数も1301組、今後も広がっていくことは確実です。こうした社会変化を受けて、LGBTを経営課題として取り組む企業も増加しており、もはや知らなかったでは済まされません。国内の性的少数者は約10%、認知率は91%ですが、理解率は57.1%とやや低く、理解を広げていくことは社会課題となっています。当社の調査結果では、性的少数者の人々は高い消費力、高い情報感度、イノベーター気質があることがわかってきており、企業としてこうした潜在ニーズを発見することは今後より重要になります。

続いて「当事者トークセッション」と題し、生活上の悩みや消費特性などについて、森永氏から三名のLGBT当事者の方々にインタビューが行われました。回答されたのはトランスジェンダーでタレント活動をしながら男性の女性化するためのレッスンスクール「乙女塾」も運営する西原 さつき氏と、ゲイのO氏(仮名)とM氏(仮名)。最初に投げかけられたのは、日常で性のあり方を意識してしまうシーンや、「ストレスを感じてしまうシーンは?」といったものでした。

西原氏:性のあり方というのはみなさん強く意識されていると感じます。
性別を移行しようとするとどうしても数年の時間がかかるため、男性として社会生活を送りながら、自分の中の女性としての性は自分しか知らないという、中途半端な時期があります。こうした時期に人の目線が気になったり、いろんなところで生活しづらいことが多かったりという話はよく聞きます。
私たちの間では「パス度」という俗語があります。例えば、もともとの性別を知られずに振る舞えると「パス度が高い」。これは綺麗になりたいといったものとは別の評価基準です。

M氏:仲良くなった相手に好きな女性のタイプなどを聞かれると困惑することはあります。そういう時はストレスと言えるかもしれません。カミングアウトする場合も何となくやりすごす場合もあります。

O氏:私は家族にカミングアウトしておらず、実家に帰った時に兄弟の配偶者からどう見られているのかなと、ストレスを感じることがあります。友人や仕事関係者にはカミングアウトしていますが、直接言ったわけじゃない人にすでに知られている場合はちょっと気になることもあります。

人生設計で不安になることは? という質問も。

西原氏:性別適合手術を受けると物理的に生殖機能が失われるので、自分の人生設計として子どもを持つという選択肢が大きく減ることになります。私も二十代の頃は母親になれないということで悩みました。
ただ、子育てをしない分、買い物や住まいなど、生活の質を上げることにこだわることが多いです。私は「乙女塾」を通して自分が苦労したことなどをフィードバックして次世代の暮らしやすさにつなげたり、作品作りなどに、意識して取り組んでいます。でも、それでいいのかという不安感は誰もが持つのでは?と思っております。

M氏:私は家族にカミングアウトできており、パートナーも同様に家族にカミングアウトしており、かなり恵まれた状況にあるのですが、カミングアウトできないことで、孤立しているケースは非常に多いです。家族だけでなく友人にもパートナーを紹介できないし、一緒に住む場合も親にはなんと説明しようかと悩んだりしている方々がいます。

O氏:今後、台湾に続いて日本でも同性婚ができるかもしれません。でも、そうした選択肢が現実のものとなったときに、今のパートナーと結婚するという実感がまだありません。結婚が可能な方々に比べると、私たちの場合はそもそも恋愛に対する取り組みや姿勢が違っているので、同性婚が日本で可能となったとき、相手とどういう付き合っていくかは、まだ不安が残っています。

性的少数者であることと感覚や悩みは? という問いには、次のような回答が。

西原氏:トランスジェンダーの人はホルモン治療を行いますが、女性ホルモンを投与すると、特に最初の頃は実年齢にかかわらず思春期のような状態になると感じています。それこそ女子中高生のように、原宿によく行くし、タピオカは飲むし、SNSも大好きだし、インスタ映えスポットも気になります。子どもを産むことが人生設計に入っていない方が多いので、学生時代のまま青春時代が続いているような感覚があります。

M氏:ゲイは当事者同士の出会いのほとんどがオンラインです。となるとプロフィール画像が重要となり、見た目が100%。今のパートナーと30代後半で別れてしまったら、その後一生パートナーが出来ず孤独かもしれないという恐怖があります。そのためにはスキンケアなどの自分磨きや、そもそも今のパートナーとの未来が気になります。

LGBTならではの情報収集方法も。

西原氏:流行やアイテムは、友人知人から直接知るよりも、ツイッターかインスタグラムがほとんどです。フォローしている中に情報感度が高い子が数人いて、みんなその子達を追いかけています。テレビからということは少なく、完全にインターネット、SNSですね。

O氏:自分もインスタグラムは使いますが、ゲイアカウントよりも趣味が合う人をセクシャリティに限らずフォローしています。あとは雑誌と、美容師さんなんかがやっているおすすめカフェなどを紹介するYouTube。雑誌とも違う生の空気感を感じられるのがいいです。

ここで一旦休憩を挟み、ワークショップの課題が提示されました。テーマは下記の二つ。

A)「消費行動」について
B)「働き方・組織づくり」について

ワークショップ中の参加者

ワークショップ中の参加者

その後、参加者が二つのグループに分かれて、約一時間のワークショップが行われました。両グループで活発な意見が交わされた後、再び合流。それぞれの内容共有のための発表が行われました。

A:同性同士の場合、パートナー関係と婚姻とは別に考える必要があり、大きな買い物をしたときの名義などをどうするか悩むところ。同性同士なだけに対等な関係を築きやすいため、超スモールなシェアリングエコノミーと相性が良いのではないかと考えた。例えば、相手が所有する車をシェアした場合に、利用料の代わりに何かお礼を返すなどもやりやすくなるのでは?と思う。
法制度(行政)を変更するのは時間がかかるので、SNSのバックデータなどを活用した証明制度があってもいいという意見もあった。

B:LGBT・性的少数者は人口の約10%もいることを知り、当たり前の存在として溶け込める世の中になるのが理想という話になった。また、LGBT以外でも、国籍や家族のことなど、言いたくない、言いづらいトピックを持っている方はいるので、そうした方々も含め認め合う社会になると良いのではと思う。そこで、多様なマイノリティコミュニティの真意を描く映像やエンターテインメント作品から、正しい知識を得られる場が設けられると良いのではというアイデアが出た。

最後に森永氏より「多様性はセクシュアリティだけでなく、国籍や身体なども含まれると思っており、今回はLGBTという切り口からでしたが、今後も『知らないことを知っていく』ということを継続して取り組んでいくことが重要だと思っています。」と締めくくり、今回のTMIPワーキングは幕となりました。

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