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【開催概要】
開催日時:2020/8/4 16:30 スタート
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2020年8月4日(火)に、Zoomを使ったTMIPイベントが開催されました。今回はセミナー「COVID-19/SARS-CoV-2の基礎知識」と、パネルディスカッション「With COVID-19のオープンイノベーション戦略」の二部構成です。
セミナーではヘルスケア事業に特化して投資をしているD3代表の永田智也氏が、投資活動を通して調査した知見をもとに、COVID-19をどのように捉えていくべきなのかについて話しました。
永田氏:複数の製薬会社はCOVID-19治療薬を作るために動いています。ただ、3月時点でスイス大手製薬ノバルティスCEOが述べていたとおり、それが完成するには、極めて楽観的にみても一年半から二年はかかります。ワクチンも同様で、WHOの今年三月の時点では、少なくとも二年はかかるだろうと発表していました。また、ワクチンができれば全て解決とはなりません。ワクチンの多くは年齢を重ねるほど効きにくくなるため、治験で多く含む若い世代たとえば二十歳の人に効くワクチンでも六十歳の人には効きにくい可能性もあります。世界で最もワクチン開発の実績のある米国大手製薬メルクのCEOは、そのうちワクチンができるから大丈夫と考えてしまうと、基本的な対策とされている人混みを避けたり、うがいや手洗いをしたりといった行動が疎かになってしまうことに対して、警鐘を鳴らしていました。同氏が強調するように、ワクチンへの過度な依存・期待をせず、地道な行動の工夫を大切にした方が良いと考えます。
永田氏:3月時点でロンドン・ビジネス・スクールが作成した分析が大変示唆深いので、引用します。公衆衛生学の観点でのアプローチは大きく分けて、自粛(資料中のContainment)とロックダウン(Suppression)とされています。自粛は犠牲者が多数出る上で集団免疫を獲得するという考え方(frond load causalities)。ロックダウンは犠牲が出るのを先延ばしする(back loads causalities)だけという見方もあり、ワクチンができぬ限り、どちらも被害の総量はあまり変わりません。
さらに重要な点として、免疫を獲得できたとしても、それがどれだけ続くのかによって状況は大きく変化します。永続的に免疫が続くなら、やがてアフターコロナの世界となりますが、免疫がせいぜい100週間といったところだとすると、COVID-19はインフルエンザ同様に季節性の病として毎年流行することとなり、ウィズコロナの世界が今後も続くこととなります。
大きくはワクチン開発に成功するか否かと、免疫の継続期間がどれぐらいかによって異なってきます。
永田氏:政府がどれだけ予算を投入しているか、あるいは地域や人種によって罹患比率に差もあり得るため、例えばアメリカがこうだったから日本もこうという予測も立てづらい状況にあります。あくまでも各国ごとに個別に考える必要があります。
と、ホラーストーリー風な内容が続きましたが、罹患した際の対処法や個人での工夫などが一般化しつつあるのも事実で、COVID-19と向き合い続ける必要はありますが、世界が滅びてしまうなどと悲観する必要もありません。繰り返しますがワクチン開発が成功するか否かと、免疫がどれだけ続くのかが重要なので、そこを注視した上で適切な行動をとる必要があると考えます。
永田氏の講演を踏まえてのQ&Aを挟み、後半はTMIP事務局の檀野正博氏をモデレーターに、引き続きD3の永田氏と、エンデバージャパンの眞鍋亮子氏によるパネルディスカッションを実施しました。まずは、現状において日本・世界のスタートアップやVC、大企業を取り巻く環境がどのように変化しているのかについてお話を伺いました。
永田氏:ドライパウダー(投資余力)もあり、VCファンドによる投資意欲は下がっていませんが、投資先が絞られ、件数は減っています。これはリーマンショックの時も同様で、当時は結果として良い会社が生き残ることとなりました。なので、VCとしては悲観的にはみていません。大企業については、経営者が従業員の健康を真剣に考えている様子が目立っています。特にアメリカの企業にその傾向が強いですね。
眞鍋氏:米国VCについては、当初は投資数も減っていましたが、最近では「一回も合わないでオンラインミーティングのみで投資を決める」といった事例も出てきているようで、変化への早い順応が見られます。
アジアのスタートアップについては、東南アジアはデジタル系の会社でも、例えばGrabのようにリアルビジネスを含んでいるところ(リアルビジネス×テクノロジーという形態)が多いため、スタートアップの業績にコロナの影響が大きく出ています。ただ、ロックダウンに成功しているベトナムや、感染者が増加傾向にあるインドネシアなど、国によって状況が180度異なるので、アジアとしてひとまとめに話すのは難しい。自身のビジネスに関係のある国の傾向を個別に見ていく必要があります。
続いての話題は、現状を踏まえての機会について。
永田氏:COVID19のハイリスクセグメントである高齢者の生活をテクノロジーやサービスでどうサポートするかが重要です。高齢者はスマホやタブレットが苦手な方が多かったのですが、今回のように遠隔診療などをしなければ命に関わるといった状態になると使うようになるかもしれません。その結果、スマホ・タブレットなどの導入が進み、今度は彼らを対象にオンライン通販などの販路拡大にも繋がってきそうですよね。ここに一つのビジネスチャンスがあると考えられます。
眞鍋氏:日本は高齢化問題の先進国なので、高齢者向けの事業をしている海外企業でも、海外の展開先としてまずは日本に進出したいという企業が多くいます。日本で成功モデルを構築し、数年後には世界へ展開するという考えですね。日本企業もまた、海外に出ていくために彼らと手を組むことができれば双方ウィンウィンになる可能性は高いと考えます。
COVID19に関わる新ビジネスという意味では、「革新的な新しいビジネスモデル」が出現したというよりは、今まであったデジタル化(例えばフィンテック)、オンライン・遠隔化等の傾向がより一層強まり、スピードアップしたという印象が強いです。
いずれにしても、COVID19の収束がまだ見えないという不確実性の高い状況の中、大企業にとっては、リスクをどのように取るのか判断がしにくい環境です。対してスタートアップは、小回りが利きますし、リスクを取ることに慣れている。大企業は、自社のリソースは主軸ビジネスに集中させ、新分野でスタートアップと組んで行くなど、住み分けをすることで危機をチャンスに変えられる可能性が高くなると思います。
望むと望まざるとにかかわらずCOVID19で世界は大きく変わってしまった。ビジネス環境も大きく変わっていくので、これを機に変われる企業が今後大きく成長できるのではないでしょうか?
話題はまだまだ尽きぬまま、予定時刻を少々超過してしまったこともあり、今後への議論も期待されつつ、今回のTMIPイベントは終了となりました。