【TMIPワーキング】サーキュラーエコノミー 『Day1:フードロス』

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開催日時 2020/5/29 15:30スタート。
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2020年5月29日(金)に、TMIPワーキング『サーキュラーエコノミー』が開催されました。
今回の議題テーマに設定されたのは「フードロス」。TMIP事務局の檀野 正博氏による今回のイベントの主旨、先進事例交えた概要説明からスタートしました。

檀野氏:TMIPではワーキングを通じて具体的に取り組んでいくアイデアの種を作れればと考えています。全世界的の食料生産の三分の一が廃棄されており、国内においても、毎日一人当たり茶碗一杯分フードロスが発生しているという試算もあります。

またコロナ禍において、「飲食店の無断キャンセル」も話題となりました。現在のウィズコロナ、これからのポストコロナの時代では、家庭での食事の機会が増えていますが、そこでも買い過ぎによるフードロスが発生しています。食のあり方が変わればフードロスのあり方も変化しており、だからこそ今、議論をする意味があると考えています。

解決するポイントして、先進事例から分かることは三つあり、まずは「買い過ぎず、作り過ぎないこと」、次に「なるべく食べていこう」ということ、そして「別の用途でも使っていくアップサイクル」。以上を念頭において考えていければと思っています。

こうしたフードロスの解決に向けた注目すべきスタートアップの事例がいくつか紹介されたのに続いて、グルーヴノーツの最首 英裕氏が登場、同社の取り組みを解説しました。

最首氏:私たちは、量子コンピュータのディープラーニング技術を使って課題解決を行う「MAGELLAN」というサービスを運営し、新型コロナウイルスの影響でいびつに変化してしまった都市インフラの再配置などに取り組んでいます。

例えば、丸の内で三菱地所さんが所有されている約30棟から排出されるゴミを、種類ごとに発生量も正確に予測することで、収集車の台数を一割から三割削減できるなど、さまざまなことが効率化できることが分かってきました。

また、人流データとよく言われますが、誰もが同じ目的で動いているわけではありません。そこで私たちは「MAGELLAN」によって、各自がどのような目的で動いているのかも把握し、そこから都市に足りない機能は何か、配置をどのようにしなおせば構造が改善されるのかといったことを考えています。

これは一見スマートシティやスーパーシティにも似ていると思われますが、そのためにブルートゥースなどのデバイスを使うことはなく、あくまでも既存のデータから洗い出すことに挑んでいます。今は福岡を拠点に行っており、いずれは全国各地の都市の機能を出せるようにし、観光政策に繋げられればと考えています。

続いて、環境省リサイクル推進室の和田 直樹氏が発表しました。

和田氏:食品製造業や外食産業などの事業計からの食品由来の廃棄物は年間約1800万トンとなり、そのうちリサイクル可能と考えられる、いわゆるフードロスに該当するものは約328万トンに及びます。

一部は飼料化や肥料化、エネルギー化で再利用されますが、そのまま焼却されたり、埋め立てられてしまったりするものはまだ300万トンぐらいとなります。家庭系廃棄物は約800万トンとなり、そのうち284万トンがフードロスで、平成29年度は合計で612万トンのフードロスが出ています。

外食産業でのリサイクル率が特に低いのが大きな課題ですが、外食は塩分や油分が多く飼料化に向かないことと、店舗あたりの発生量が少なく輸送コストが悪いというあたりが原因と考えられます。

また、外食産業でのフードロスは、やはり人口密集度の高い都市に集約されています。食品リサイクル法では再生利用率を促進する制度があり、その際の基準や優先順位を設けているので、上手に組み合わせて使っていただき、リサイクルループの安定的な輪を作っていきたいと思っています。新型コロナウイルスによる食品ロスの発生状況がこれからどう変わっていくのか、今後も情報を集めながら見て、検討を続けていく必要があると考えています。

取り組み紹介の最後には、三菱地所の長井 頼寛氏が登場しました。

長井氏:5月から11月までの予定で『大丸有SDGs ACT5』という催しに取り組んでいます。

大丸有はただの地域コミュニティではなく、28万人、4300事業所が集まっているエリアなので、企業の枠を超えて街を舞台にした実証実験や情報発信を行い、街が持っている力を地球の力につなげていこう、そのためのロールモデルを作ろうと、都市の機能を最大化するとともに、都市の役割を再認識していくことを目的としています。

弊社を含む複数企業がそれぞれのリソースを活かして各社単体ではできないコンテンツに取り組んでおり、フードロス削減にまつわるものとしては『あいのりマルシェ』があります。具体的なコンテンツ内容については今後順次発表していく予定です。情報発信も大事ですが、求められているのは具体的なアクション。行動で得られた知見や効果を11月末に発信しますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします」

ここから数分間の休憩。その間に後半のディスカッションに向けて、参加者のグループ分けが行われました。討議のテーマは下記の三つ。

A)都市のデータを活用したアフターコロナ時代の飲食店城予測サービス
B)都市におけるフードロスマッチング、事前予約・決済サービス
C)生ごみのアップサイクルを起点とした循環型フードバリューチェーン

このうちAとBが各2グループ、Cが1グループの5グループに分かれ、それぞれに活発なディスカッションが行われました。時間はやや駆け足の約35分。続いて全体会議へと戻り、各グループから発表が行われました。

A1:定時出勤、定時退勤という概念がなくなるため、昼食時間が拡大する。そのため飲食店は店員の配置や確保に変化が必要となる。また、オフィスワーカーがオフィスに来る必要が減るため、飲食店は固定的に場を持つ意味を失う可能性がある。新たな顧客に提供することを考える必要が生じる。

A2:実証実験は予測を外してしまった場合に飲食店がダメージを受けるのは避けたい。発信の仕方を含め、各ステークホルダーがハッピーになるような設計を考えていく必要がある。

B1:昼食はマッチングによって安く食べられるのは助かるが、夜の割引はあまり効果がないかもしれない。予約のキャンセルについては、丸の内の人々はプライドが高いため、予約もキャンセルも実名でなど良き行動をすることで評価アップにつながるシステムがあると面白いかもしれない。

B2:フードロスを減らすのは環境負荷を減らすためなので、マッチングしたがゆえにほかのところで課題が発生するのは避けるべき。フードロス発生の要因に商品が安くてもったいなさを感じられないというものもあると思われるので、価格を高くするという方法もあるのではないか。大丸有は日本のロールモデルになれるエリアなので、街全体がエシカルを目指す実証実験を。

C:そもそもゴミの分別定義がクリアになっていないので、飲食店に対して分別をしっかりしてもらうにはそこになんらかのメリットが必要。また、アップサイクルで飼料や肥料にできたとしても、今までと違うルートから農家に購入してもらうために、例えばサステナビリティ認証を取るといった手法が使えるかもしれない。

良いアイデアは会員間で共有し、今後もアーバンラボプロジェクトで議論を継続、あるいは実証実験を行っていく予定とアナウンスされ、Zoomを利用した初のサーキュラーエコノミーは終了となりました。

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